P-I-D-1
組織ドプラ法を用いたファロー四徴症術後の右室壁運動異常の評価
埼玉県立小児医療センター循環器科
安藤達也,平田陽一郎,河井容子,菱谷 隆,星野健司,小川 潔

【目的】ファロー四徴症術後の右室機能は遠隔成績を左右する重要な要因であり,さまざまな評価方法が検討されている.近年組織ドプラ法により非侵襲的な心筋壁運動の部位別評価が可能になった.今回,ファロー四徴症術後患児における右室心筋自由壁の運動速度測定を行い異常壁運動の頻度や他の指標との相関につき検討した.【方法】ファロー四徴症の根治術後の患児 9 名(男 2 名,女 7 名)を対象に右室自由壁の基部(三尖弁輪部),心尖部の心筋壁運動速度を測定した.【結果】心基部での心筋速度波型はS波(陽性波),E波(陰性波),A波(陰性波)すべて正常パターンを示した.心尖部ではS波(収縮期心筋最大速度)が陰転化する異常パターンが 6 人(67%)に認められた.また,E波(拡張早期心筋速度)が陽転化する異常パターンが 7 人(78%)に認められた.心尖部S波が異常陰転パターンの場合は高率に心尖部E波が異常陽転を示した(r = 0.64,p = 0.04).心尖部A波(拡張末期心筋速度)は異常陽性波パターンは 1 例のみ(11%)であった.心基部S波の振幅と心尖部S波の陰転化には相関がなく,左室駆出率や肺動脈弁閉鎖不全の程度とも明らかな相関は示さなかった.心電図では,心尖部S波とQRS時間との間に負の相関が認められた(r = 0.68).QT時間については相関がなかった.【結論】ファロー四徴症術後には高率に心尖部の右室壁運動異常が合併することが組織ドプラにより確認できた.QRS時間との相関より心筋内電導遅延(脚ブロック)との関わりが示唆される.

閉じる