P-I-D-2
小児におけるaugmentation index─正常曲線の作成─
北海道大学医学部小児科
村上智明,盛一享徳,八鍬 聡,武田充人,上野倫彦

【目的】小児においては大動脈縮窄症・大血管転換症など手術の際,大動脈に大きな操作を加える疾患が少なくない.これらの疾患の術後においては大動脈機能に問題が生じることが容易に想像される.augmentation indexは大動脈機能・血行動態を解析するうえで重要な指標の一つである.しかしながらこのindexは年齢・身長の影響を大きく受ける.そのため小児におけるaugmentation indexに関する報告は少なく,正常値も確立していない.そこでわれわれは小児における大血管機能・血行動態を検討する指標とするためにaugmentation indexの正常曲線を作成した.【方法】対象は未手術の心房中隔欠損症22例・不完全型心内膜床欠損症 2 例・心室中隔欠損症11例・肺動脈弁狭窄症 3 例の計38例.全例心拍出量は正常であり大動脈に手術操作を加えていない症例である.心不全症状を呈している児,処方を受けている児はいなかった.動脈管開存,大動脈閉鎖不全など有している症例は除外した.年齢は8.1 ± 5.0歳(0~19歳).これらの症例の心臓カテーテル検査の際にカテ先マノメータ付きカテーテル(Millar,SPC-464D)を上行大動脈に留置し大動脈圧波形を記録した.その圧波形よりaugmentation indexを算出し解析した.【結果】augmentation indexは加齢とともに急激に減少し10代前半頃に最低値をとりその後ゆるやかな上昇傾向を呈した.10代後半のaugmentation indexはMacDonaldの教科書の値とほぼ同様の値であった.この年代においてaugmentation indexは身長の影響を強く受けていた.【結論】小児におけるaugmentation indexの正常曲線を作成した.この年代では身長の影響が強いことが示唆された.今後この曲線をもとにさまざまな疾患・病態における大動脈機能・血行動態の解析を行う予定である.

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