P-I-D-3
高頻度心房ペーシングによる右心バイパス術後症例の血圧・心拍出量変動の検討
倉敷中央病院小児科
田原昌博,脇 研自,新垣義夫,馬場 清

【背景】Fontan術後の合併症として頻拍発作の出現が問題となっている.また,右心バイパス手術後での電気的右心房高頻度刺激で血圧が著しく低下する例がみられる.【目的】右心バイパス手術例を対象に,電気的右心房高頻度刺激による頻拍時の循環動態の変動を観察し,その現象を解明すること.不整脈の危険性を予測できる因子を挙げること.【対象】Fontan術後 3 例(F群),Glenn術後 5 例(G群),コントロール 3 例(C群).【方法】基礎心拍数より段階的に右房ペーシングレートを上げて,血圧変化を記録した.同時に心エコーで心拍出量の評価を行った.大動脈血流速波形の速度時間積分値(VTI),1 回拍出量(SV),心拍出量(CO),心係数(CI),駆出時間(ET),収縮期圧(SP),平均血圧(MP),血管抵抗(TSR)の変化について検討した.また,変化の程度と心室駆出率(EF),心室拡張末期容積(EDV),心室収縮末期容積(ESV),平均肺動脈圧(mPAP)との比較検討を行った.【結果】ペーシング開始前よりMPが60%以下に低下した例がF群で 3 例中 1 例,G群で 5 例中 2 例認めた.SVは各群ともに減少し,G群で大きく減少する傾向がみられた.COはG群で減少する傾向がみられた.各群ともにCIは著明な変動を認めず,ETは減少した.TSRはF群に著明に減少する例を認めた.MPが60%以下に低下した例とその他の術後例との比較ではEF,EDV,ESVに大きな差は認めなかった.しかしmPAPは低下した群で7.3 ± 3.21mmHg,非低下群で13.4 ± 2.97mmHgであった.【結語】右房ペーシングによりF群・G群の 8 例中 3 例(37.5%)でMPが60%以下に低下した.F群ではTSRの減少が,G群ではSVの減少が関与していると考えた.右心バイパス手術群は他疾患に比べて頻拍発作時に血圧低下が大きく,症状出現の危険性が高い例が存在すると考えた.

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