P-I-D-5
成人未手術大動脈縮窄症におけるバルーン拡大術後のaortic stiffness
北海道大学医学部小児科
武田充人,村上智明,盛一享徳,八鍬 聡,上野倫彦

【背景・目的】われわれは以前,大動脈縮窄症(以下,CoA)術後症例において修復部stiffnessが増大していることを報告したが,未手術CoA症例に対する経皮的バルーン拡大術後での報告はない.最近,当院で未手術CoAに対する経皮的バルーン拡大術を経験し,修復部stiffnessの経時変化を追跡したので報告する.【症例】29歳,男性.以前より高血圧を指摘され当科でフォローされていた.2004年 2 月MRIを施行した際にCoAを認め,同年 5 月に心臓カテーテル検査を施行した.上行大動脈圧158/82mmHg,狭窄部圧較差48mmHg,大動脈造影にて最狭窄部径4.3mmであった.これに対し,XXL16mmを用いてバルーン拡大術を施行し,最狭窄部径12.6mm,圧較差10mmHgまで改善した.6 カ月後に術後評価目的で心カテを施行し,再狭窄は認めなかった.【方法】この症例に対し,血管内超音波を用いて,術前,術直後,および術後 6 カ月後において上行大動脈(AAo),大動脈縮窄部(CoA),下行大動脈(DAo)の収縮期,拡張期の血管内腔をトレースし,周径を求めた.同レベルで測定した大動脈圧をもとに,stiffnessの指標であるelastic modulus(Ep)を算出した.【結果】術前のEpはAAo,CoA,DAo各部位で0.76,0.25,2.18(× 106 dynes/cm2)であった.術直後はおのおの0.67,0.21,1.32(× 106 dynes/cm2)と 修復部stiffnessは変化なかったが,6 カ月後に0.57,1.39,0.68(× 106 dynes/cm2)と修復部stiffnessのみ増大し,外科的修復術後遠隔期自験例でのEp(AAo 0.39 ± 0.16,CoA 1.24 ± 0.82,DAo 0.86 ± 0.88 × 106 dynes/cm2,n = 18)と大きな差異は認めなかった.【考察】症例の蓄積が必要であるが,CoA修復部はバルーン拡大術による血管損傷からの修復過程でstifffnessが増大する可能性がある.【結語】未手術CoA症例に対する経皮的バルーン拡大術は外科的修復術と同様,修復部のstiffnessは増大する可能性がある.

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