P-I-D-8
川崎病における心機能障害はE/Eaからみると代償されている
名古屋第二赤十字病院小児科
横山岳彦,岩佐充二

【背景】川崎病において,左心機能は収縮能,拡張能伴に障害を受けていることが報告されている.これらの障害は左室拡張末期圧の上昇を来し,左房圧の上昇を来すのではないかと考えられる.最近左室流入血流速度と,組織ドプラ法における検討で,拡張早期血流速度(E)と拡張早期僧帽弁弁輪移動速度(Ea)の比(E/Ea)が左房圧に相関しているとの報告がある.川崎病急性期におけるE/Eaの変化を検討したので報告する.【症例】当院に入院した川崎病のうちガンマグロブリン投与前と解熱時の心機能を検討できた12例.ガンマグロブリンの投与は岩佐のスコアによるリスク分類にて行った.【方法】入院時に,採血を行い岩佐のスコアによってリスク分類を行い,BNPを測定した.超音波ドプラ法により左室流入血流速度,組織ドプラ法により僧帽弁弁輪移動速度をそれぞれ計測した.測定は入院時と14病日に行った.統計的解析はpaired t testによりp < 0.05を有意とした.【結果】E/Aは,入院時と14病日との間に有意差はなかったが(mean ± SD 1.23 ± 0.38 1.71 ± 1.06 p = 0.06),増大する傾向を認めた.Ea/Aaは入院時と14病日の間に,有意に増大した.(1.55 ± 0.78 vs 2.48 ± 1.43)E/Eaは有意な変化を認めなかった(8.91 ± 3.66 vs 9.4 ± 4.45).しかしBNPが413pg/dlと高値だった 1 例においては,E/Eaの上昇を認めた.【考察】E/Eaの変化が認められないことから川崎病の急性期と回復期において左房圧に変化はないと考えられた.拡張能障害,収縮能障害にも関わらず,急性期の左房圧は代償されていると思われた.BNPの高値であった 1 例では回復期においてE/Eaの上昇をみとめ,回復期に左房圧の上昇を来しているのではないかと思われた.【結語】川崎病において急性期の心機能障害は代償され左房圧の上昇には至っていないと考えられた.しかし,心負荷の高い症例においては回復期に,左房圧の上昇を来している可能性が示された.

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