P-I-D-9
染色体異常,奇形症候群の心疾患手術予後の検討(Down症,22q11.2欠失症以外を中心に)
千葉県こども病院循環器科1),千葉県こども病院心臓血管外科2)
中島弘道1),青墳裕之1),久保達也1),澤田まどか1),池田弘之1),建部俊介1),石橋信之2),渡辺 学2),青木 満2),藤原 直2)

【はじめに】染色体異常や多発奇形をともなうCHDの治療計画には手術予後の検討が必要である.特にDown症,22q11.2欠失症以外に注目して検討した.【対象と方法】当院で1990年 5 月~2004年 9 月に211人の奇形症候群患児に心疾患手術を行った.これは全手術症例の12%であった.このうちDown症が127例(7.5%),22q11.2欠失症が27(1.6%)例であるが,これらを除いた57例中55例(全体の3.2%)の経過を追跡できた.55例の内訳は明らかな染色体異常26例,CHARGEなどの奇形症候群19例,特定できない多発奇形児10例であった.これらの予後を比較検討した.【結果】おもな心疾患はVSD 13例,TOF 11例,PDA 9 例,COA 7 例,ASD 4 例であった.55例に対してのべ69回の心臓手術がなされた.開心術36回,非開心術が33回であった.手術時年齢は平均1.7歳(0~10.9歳)であった.死亡例は遠隔期も含めて17例で手術件数の24.6%であり,これは当院の染色体異常または奇形症候群以外の症例の死亡率(6.3%)と比較して高率であった.死亡のうち 8 例は非開心術後であった.最終手術時年齢は死亡例で平均0.5歳,生存例で平均2.6歳であり有意に死亡例が低かった(p < 0.01).また死亡例の 7 例は染色体異常であった.一方Down症では死亡は 6 人(4.7%),22q11.2欠失は死亡例 0(0%)であり,両群の死亡率は低かった.生存した38人中 4 人が術後に気管軟化症などで気管切開を必要とした.1 歳以上の手術例13例では予後は良好であったが,術後脳梗塞が 1 例,CAVBが 1 例にみられた.【結語】Down症,22q11.2欠失を除いた奇形症候群に関しては,心疾患手術のリスクは通常より非常に高く,特に乳児期早期の手術は死亡率が高かった.また術後に循環動態が改善しても気管切開が必要になる頻度が高く,術前の気道の評価が重要であると考えられた.一方 1 歳以上まで手術を待機できる症例では手術のリスクは低いと考えられた.

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