P-I-D-10
MSA(心室中隔瘤)の長期予後
埼玉県立小児医療センター循環器科
平田陽一郎,河井容子,安藤達也,菱谷 隆,星野健司,小川 潔

【背景】MSA(membranous septal aneurysm:心室中隔瘤)はVSD(心室中隔欠損)の自然閉鎖に重要な役割を果たすが,まれには三尖弁狭窄や閉鎖不全・右室流出路狭窄・血栓塞栓症の発生などの報告がある.VSDが自然閉鎖した後のMSAの長期的な予後についての報告は少ない.【目的と方法】当院において過去30年間に,MSAを形成し手術を施行せずに長期間観察できたVSD症例について,その予後を検討することを目的とした.対象は男性17例,女性26例の合計43例.【結果】初診時の平均月齢は5.4カ月であり,大半の症例が 3 カ月以内に心雑音を主訴に外来を受診していた.初診時の平均VSD径は4.2mmで,心不全症状を認め強心剤などの内服治療を必要としたのは 8 例であった.その後,平均114.0(11~220)カ月の経過観察期間中に,4 例をのぞいてVSDは自然閉鎖した.残存するMSAの大きさは10mm以下のものが大半であるが,最大では18 × 12mmあり,3 例では右室内に房状に突出していた.経過中にMSAが完全に消失したのは 2 例のみだった.しかし三尖弁狭窄や閉鎖不全などの血流障害や血栓形成・感染性心内膜炎を認めた症例はなかった.【結論】VSDが自然閉鎖したあともMSAは長期に残存する.文献的にはごくまれに合併症も報告されるが,当院では長期予後は良好であった.

閉じる