P-I-D-11
中欠損の傍膜様部心室中隔欠損症の臨床的検討
山形大学医学部発達生体防御学講座小児医科学分野
鈴木 浩,仁木敬夫

【背景】中欠損の傍膜様部心室中隔欠損症は乳児期にうっ血性心不全を呈するが内科的にコントロール可能な例が多く,欠損孔の自然閉鎖傾向もあり,手術適応について議論がある.そこで,1999年以降に経験した本症について臨床的に検討した.【対象・方法】1999~2003年に出生し,当科と関連病院で経験した合併奇形のない中欠損の傍膜様部心室中隔欠損26例を対象とした.中欠損の心室中隔欠損は,多呼吸,陥没呼吸などのうっ血性心不全症状を呈し,心エコー図で左室拡張末期径が120%正常以上あるいは左房・大動脈径比が1.5以上の左心容量負荷所見を認め,肺高血圧がないか軽度である例とした.臨床所見,心エコー図所見の経時的変化と臨床経過を検討した.【結果】25例中手術を施行したのは 1 例で,1 歳 4 カ月で手術を施行した.呼吸器感染を繰り返し,体重増加が不良で,左室拡張末期径が160%正常であった.未手術例25例中24例に対し利尿薬を投与した.6 例は一過性に体重増加不良を呈し,1 例は左心容量負荷所見が改善したにもかかわらず体重増加不良が続いた.3 例は一時呼吸器感染を繰り返した.1 歳までに心不全症状や左心容量負荷所見が改善したのが11例,2 歳までに改善したのが 2 例であった.現在 1~2 歳で不変が 6 例,3 歳台で改善しつつあるのが 5 例であった.1 例は 2 歳で自然閉鎖した.2 例(2 歳,3 歳)でごく軽度の大動脈弁逆流がみられた.肺高血圧や感染性心内膜炎を合併した例はなかった.【結論】中欠損の傍膜様部心室中隔欠損では 1~2 歳までに約半数で心不全症状や左心容量負荷所見が改善し,3 歳台に改善する例もあった.本症に対して乳幼児期には保存的なアプローチが望ましいと考えられるが,大動脈弁逆流の出現等に留意して注意深く経過観察する必要がある.

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