P-I-D-12
大動脈弁逸脱と閉鎖不全を伴う漏斗部心室中隔欠損症に対する手術時期の検討
岩手医科大学附属循環器医療センター小児科1),岩手医科大学附属循環器医療センター循環動態検査室2),岩手医科大学医学部小児科3)
外舘玄一朗1),小山耕太郎1),高橋 信1),神崎 歩1),佐々木幸子2),伊藤記彦2),嘉村幸恵2),千田勝一3)

【背景】漏斗部心室中隔欠損症(outlet VSD)は自然閉鎖が少なく,進行性の大動脈弁逸脱(AVP)・閉鎖不全(AR)を高率に合併するため,早期に手術することが勧められている.しかし手術をいつ行うのが適当なのかは明らかでない.当院で経験したoutlet VSDについて,欠損孔の大きさと術前・術後のAVP・ARから適切な手術時期を後方視的に検討した.【方法】対象は45例のoutlet VSDで,初診時の年齢は生後 1 日~9 歳(平均0.5 ± 1.8歳),追跡期間は 2 カ月~14年(4.8 ± 3.2年)である.手術と術前のエコーによる欠損孔の大きさ,大動脈長軸像・短軸像でのAVPの程度を表す諸指標,カラードプラ法でのARの程度と術後ARとを比較した.【結果】45例中38例(84%)が生後10日~10.4歳(2.0 ± 2.8歳)に右冠尖のAVPを合併し,このうち17例が生後1.8カ月~9.2歳(2.7 ± 3.2歳)にARを発症した.39例が生後2.8カ月~10.5歳(2.5 ± 2.9歳)に手術を受けた.手術適応は心不全13例,ARはないが明瞭なAVP13例,AR13例で,心不全例のうち10例が経過中にAVP・ARを合併した.手術時に計測した欠損孔の径は心不全例 6~12mm(8.5 ± 1.5mm),AVP例 2~13mm(6.3 ± 3.6mm),AR例 3~12mm(7.6 ± 2.6mm)と手術適応のない例に比べて大きく,AVP・AR例のうち欠損孔 4mm以上は22例,4mm未満は 4 例であった.術前のARは,なし22例,わずか10例,軽度 6 例,中等度 1 例であった.術後には,なし21例,わずか18例で,軽度と中等度の例はみられなかった.AVP・ARによる手術まで15日~1.3年(5.5 ± 4.5カ月)の間隔でエコーを繰り返し行った21例のAVP指標は増悪傾向があるものの有意ではなかった.【考案】欠損孔の大きさがAVP・ARの合併と進行に関与することが示唆された.大きな欠損孔の例ではAVPが軽度である早期に手術することにより術後のARを軽度に抑えることができると考えた.

閉じる