P-I-D-15
三心房心の手術症例検討
東京女子医科大学心臓血管外科
山本 昇,黒澤博身,長津正芳,新岡俊治

【目的】当院で経験した複雑心奇形を合併しない定型的三心房心の外科治療成績について検討する.【対象と方法】1974~2004年に当院で経験した定型的三心房心20例を対象とした.性別は女性11例,男性 9 例で,手術時の年齢は生後 1 カ月~39歳(平均 5 歳10カ月)であった.病型分類は,三心房心とは副室と固有左房の間に直接交通が存在するものと定義し,ASDのない古典的な三心房心を 1 型,ASDがあるものを 2 型と大別.さらに 2 型を副室と右房間にASDがある場合を 2a型,固有左房と右房間にASDがある場合を 2b型,2a + 2bを 2c型とした.右房と左房の分離が不明瞭な単心房例などは非定型例とし今回の検討からは除外している.従来のLucas-Schmidt分類は,TAPVCと定義上重複があるため使用しなかった.20例の中 1 型 9 例,2a型 4 例,2b型 5 例,2c型 2 例であった.術前の臨床症状は,乳児期以前は哺乳力低下,それ以降は心雑音がおもで,胸部X線では全例に肺野うっ血像を認めた.また,1 例は上室性期外収縮を指摘され精査にて診断された.術前カテーテルを施行した11例で,右室圧は58~113mmHg(平均66.5mmHg)と高値であった.術式は,アプローチを 1 型は副室から,2 型は右房を選択し,全例とも副室と固有左房間の異常隔壁を切除し 2 型ではASD閉鎖も施行した.【結果】全例において臨床症状は,術後すみやかに改善し,術後エコー検査で推定右室圧は33mmHgから60mmHg(平均43mmHg)であった.術前の副室と固有左房間の交通孔の開口面積が小さい症例ほど早期より肺静脈閉塞性高血圧症を発症する例が多かった.【結語】三心房心の術後遠隔成績は,有意な上室性不整脈の発生もなく,肺静脈閉塞の再発・再手術例もなく,十分な異常隔壁切除により満足すべき結果を得られた.

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