P-I-D-17
ステロイド療法が有効であったGlenn術後の蛋白漏出性胃腸症の 1 例
関西医科大学小児科1),国立病院機構函館病院小児科2),天理よろづ相談所病院小児科3)
吉村 健1),寺口正之1),池本裕実子1),野木俊二2),松村正彦3)

【はじめに】Fontan型手術をはじめ,開心術後の中・長期に発症する合併症として蛋白漏出性胃腸症(以下PLE)があり,難治性かつ予後不良である.種々の内科的および外科的治療が行われているが,有効であった報告は少ない.今回,Glenn術後 3 年にPLEを発症し,ステロイド治療により症状の改善をみた症例を経験したので,報告する.【症例】6 歳,女児.診断は,右胸心,単心室,三心房心,共通房室弁口,肺動脈狭窄.生後 7 カ月にGlenn術および隔壁切除術が施行された.1 歳 4 カ月時,体肺動脈側副血管に対し,コイル塞栓術が施行された.術後に肺出血を認め,左肺上葉切除術が施行された.4 歳から顔面浮腫,下痢症状,低蛋白血症が出現し,呼吸器感染を繰り返すようになった.α1 アンチトリプシンクリアランス高値(115ml/日)であり,消化管シンチグラフィでは左下腹部腸管に集積像があり,PLEと診断された.利尿剤および水分制限,高蛋白・低脂肪食は効果がみられなかった.4 歳 6 カ月時に施行された心臓カテーテル検査では,上大静脈圧16mmHg,肺動脈圧13mmHg,下大静脈圧 5mmHgであり,上大静脈造影では左肺動脈は造影されず,拡張した半奇静脈が側副血行となっていた.外科的治療の適応はないと判断し,5 歳 7 カ月時にステロイド治療を行った.プレドニゾロン1.5mg/kg/日を開始したところ,開始後 1 週頃から,浮腫の軽減がみられた.開始後 4 週には,血液検査で総蛋白,アルブミンともに正常となり,開始後 7 週には免疫グロブリンが正常値となった.その後,プレドニゾロンを漸減し,現在(開始後11カ月),0.1mg/kg/日まで減量したが,症状の悪化はみられず,血液検査上,総蛋白,アルブミンは正常値を維持している.【まとめ】Glenn術後に合併したPLEに対し,ステロイド治療を行い,症状は改善し,有効であった.文献的考察を加え報告する.

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