P-I-E-1
肥大型閉塞型心筋症の病態を持ちながら自然治癒傾向を示した 1 例
埼玉医科大学小児心臓科
石戸博隆,小林俊樹,先崎秀明,松永 保,竹田津未生,杉本昌也,岩本洋一,熊谷晋一郎,熊倉理恵

【はじめに】今回われわれは新生児期に著明な心筋肥厚・大動脈弁下狭窄・肺動脈弁下狭窄・肺動脈弁上狭窄・心室性期外収縮頻発等の症状をもちながら,内服のみで改善傾向を認めた症例を経験したので,若干の文献的考察を含めて報告する.【症例】現在1歳10カ月の男児.心筋症・糖尿病・糖原病・von Recklinghausen病等の家族歴なし.満期・頭位自然分娩.日齢 1 にチアノーゼを認め当院NICU入院.全周性心筋肥厚・肺動脈狭窄・心室性期外収縮散発を認めたが,悪化傾向なく退院.以後当科フォロー中異常な頻脈や心エコー上の左室流出路狭窄・肺動脈弁上狭窄・心筋肥厚を認めその後増悪傾向,PVCも増加傾向(頻発,multifocal)で,体重が 3 カ月時で 8kgと異常増加し,HOCMや糖原病・横紋筋腫等の可能性も考慮して心カテーテル検査.右室―肺動脈圧較差;31mmHg,左室―大動脈圧較差;安静時10mmHg・ペーシングで20mmHgに拡大.心筋生検;核の大小不同や錯綜配列・心筋肥厚なし,glycogenの蓄積も認めず,spider cell等横紋筋腫の所見なし.症状乏しくatenolol・phenobarbital・mexiletineの投与のみで経過観察.8 カ月時より症状消退傾向,徐々に内服を中止し現在では軽度のsupra PSを残すのみ.【考察】肥大型心筋症が胎児エコーで発見されたとの報告は散見されるが,特発性では胎児水腫等の症状を持つ症例が多く,その予後は悪い.本症例は家族歴を欠きまたいわゆる「たまり病」やvon Recklinghausen病も現段階では否定的であるが,異常な体重増加・停留精巣・臍ヘルニアを伴っており,何らかの症候群である可能性を否定できず,原因検索中である.今後とも経過を観察しまた他の症例を蓄積して周生期の心筋症様病態の治療を検討する必要がある.

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