P-I-E-5
心房中隔欠損術後に発症した収縮性心膜炎の 1 例
滋賀医科大学小児科
神谷 博,白井丈晶,渡邊格子,藤野英俊,中川雅生

【背景】収縮性心膜炎(以下CP)は術後合併症としてよく知られているが,その頻度は非常に少ない.今回われわれは,心房中隔欠損術後に心不全症状を呈し診断に至ったCPの 1 例を経験したので報告する.【症例】16歳の時に心雑音を指摘され,精査にてASDと診断される.17歳時(2001年 3 月)に心内修復術を施行され,術後経過は良好で発熱や胸痛など心膜切開後症候群を疑わせる症状はみられなかった.2003年11月頃より日常生活の労作時に呼吸苦が出現し始めた.胸部単純写真にて心胸郭比40%,右肺に胸水貯留を認め,心エコーでは左室拡張末期径は43.2mmと左室の拡大は認めず,心室中隔は奇異性運動を呈した.入院後は内科的治療を行い心不全症状はいったん軽快するが,その後も症状の増悪,軽快を繰り返すため精査目的にて心臓カテーテル検査を施行した.右房圧は平均18mmHgと上昇し,右室拡張末期圧,肺動脈拡張期圧および肺動脈楔入圧はほぼ等しく心室の拡張障害が認められた.術後症例であることからCPを考え胸部CTを施行したところ,心膜の肥厚および少量の心嚢液貯留を認めCPと診断,心膜切除術を施行し術後経過は良好である.【考案】胸水貯留と心エコーにて左室機能の低下を認め,当初は左心不全と考え精査・治療を行った.術後症例の心不全で心拡大を認めない例ではCPを考慮すべきであると考えられた.

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