P-I-E-8
Duchenne型筋ジストロフィ患者における冠動脈血流予備能の検討
北里大学医学部小児科
木村純人,堀口泰典,中畑弥生,藤野宣之,小川夏子,石井正浩

【背景】Duchenne型筋ジストロフィの予後決定因子の一つとして拡張型心筋症が知られている.しかしながら,その心筋障害発生のメカニズムは明らかでないことも多い.【目的】Duchenne型筋ジストロフィ患児の心筋障害と冠動脈血流予備能の関連性を検討し,報告する.【方法】9 歳 8 カ月~14歳 9 カ月の 4 例の患児を対象とした.12誘導心電図(V2,V3 誘導を除く)ならびに血圧モニター下に安静時,ATP(140γg/kg/min DIV)負荷時の左冠動脈前下行枝(LAD),右冠動脈後下行枝(RCA)の血流速度を心エコー図を用いて測定した.左右冠動脈につき負荷時の最大流速を安静時の最大流速で除したものを血流予備能(CFR)とした.得られた結果をそれぞれの患児の血清BNP値,血清HANP値,胸部X-P(CTR),安静時左室駆出率(LVEF),安静時心拍数等と比較検討した.【結果】LAD CFRは4.49~1.11,RCA CFRは4.59~1.09であった.血清BNP値は3.65~200pg/ml,血清HANP値は9.2~113pg/mlであった.CTRは47.3~53.5%であった.安静時LVEFは75.9%~14.3%,同心拍数は82~100/分であった.LVEF以外の値は左右CFRと有意な負の相関を,LVEFは正の相関を示した(数値はいずれも若年から年長の順に表示).【考案】CFRは心機能の悪化した症例ほど低下していた.Skalidisらは特発性拡張型心筋症において心機能とCFRの同様の関係を報告している.今回の検討結果はDuchenne型筋ジストロフィにおいてもCFR低下と心筋障害の進行に関連性があることを示している.【結論】Duchenne型筋ジストロフィ患児の心筋障害の進行にCFRの低下が関与している可能性が示唆された.

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