P-I-E-10
心エコー検査による小児の冠動脈径の正常値の検討
NTT東日本札幌病院小児科
布施茂登,大柳玲嬉

【目的】川崎病冠動脈病変の診断に際し,冠動脈拡大の診断は病変前後の冠動脈径と比較してなされる.しかし冠動脈病変の範囲が広い場合や,冠動脈の左右いずれかの優位がある場合には,冠動脈拡大の判断に苦慮することが多い.われわれは冠動脈拡大の診断のために冠動脈径の正常値を検討した.【方法】心疾患のない小児または軽症の不整脈の小児96名(男42名,女54名,年齢 0~17歳,4.8 ± 4.4歳)を対象とした.ALOKA社製SSD 5500,5~7.5MHzプローブを使用した.右冠動脈(RCA)は円錐枝の近位のSeg 1,左冠動脈主幹部(LM)はSeg 5,前下降枝(LAD)は第 1 対角枝の近位のSeg 6,回旋枝(LCX)はLMからの分岐直後のSeg 11を最大拡大にて計測した.また冠動脈の左右優位を考慮し,RCA + LMの径も検討した.患者の親からインフォームドコンセントを得て行った.【成績】それぞれの冠動脈径は身長,体重,体表面積と良い直線相関を示したが,このなかで体表面積(BSA)が最も良い相関係数を示した.回帰直線は以下の通りRCA = 0.70 + 1.74BSA(r = 0.87,n = 96,y切片の95%上限0.86),LM = 0.90 + 2.12BSA(r = 0.87,n = 96,y切片の95%上限1.09),LAD = 0.80 + 1.46BSA(r = 0.85,n = 67,y切片の95%上限0.97),LCX = 0.72 + 1.13BSA(r = 0.80,n = 66,y切片の95%上限0.89),RCA + LM = 1.60 + 3.86BSA(r = 0.91,n = 96,y切片の95%上限 1.87),いずれもp < 0.0001,F < 0.0001,冠動脈径mm,体表面積m2.【結語】小児の冠動脈径は体表面積と良い相関を示す.川崎病による冠動脈拡大の診断のために,冠動脈径正常値は有用と思われる.

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