P-I-E-11
MRIによる川崎病冠動脈障害の血管壁描出─脂肪抑制併用Spiral Scan black blood coronary vessel wall imageの試み
東京逓信病院放射線科1),東京逓信病院小児科2)
武村 濃1),鈴木淳子2),稲葉利佳子2),是永建雄1)

【目的】われわれは細部を高速撮像で高画質に描出可能なSpiral Scanシーケンスの特徴をいかし,心電図同期と脂肪抑制併用のblack blood(BB)法で冠動脈壁撮像を試みた.これは最新テクニックであり,初の臨床報告である.【使用装置・方法】使用装置はGyroscan Intera 1.5T Master R.9(フィリップス社製)を用い,撮像条件はTR = 31ms,TE = 5.1,FA = 90°,Matrix = 272,slice = 1,slice th = 5mm,Fat sat + である.撮像時間は 1 枚に対して約24秒間の呼吸停止下と,呼吸停止せず約 1 分間の呼吸同期併用の 2 法とした.従来のTSE系BBシーケンス(T-BB)と今回の試みたGE系Spiral Scan BBシーケンス(S-BB)との描出の違いを検討した.川崎病 3 例(4 歳,20歳,22歳)の冠動脈瘤血管壁に対して内膜肥厚,血栓の描出を行った.【結果・考察】川崎病冠動脈瘤血管 2 枝,閉塞血管 1 枝,拡張血管 1 枝,健常冠動脈血管 4 枝に対してS-BBを用いた冠動脈壁短軸撮像を行った.今回検討したシーケンスは脂肪抑制を併用しているため,冠動脈壁のみを高いS/Nと空間分解能で描出することができた.内膜肥厚の血管壁の信号強度は実質信号として確認され,血栓に対しては高信号で呼吸停止法と呼吸同期法ともに鮮明な血管壁構造を描出し得た.問題としてはスライス選択をする際,目的部位に対しての垂直断面の設定に苦労を要した.当院は川崎病障害に対しT-BBを用い冠動脈壁構造の評価を行っているが,さらに脂肪抑制併用S-BB冠動脈壁画像を活用し冠動脈壁肥厚と血栓の鑑別診断の方向性を求め今後臨床的有用性を検討したい.

閉じる