P-I-E-15
川崎病による進行性の超巨大冠動脈瘤に対する治療戦略
日本大学医学部小児科
平野幹人,鮎沢 衛,阿部 修,宮下理夫,谷口和夫,金丸 浩,唐澤賢祐,住友直方,岡田知雄,原田研介

われわれは超巨大冠動脈瘤を呈した川崎病の 3 症例を経験した.いずれもγ-グロブリン大量療法に対して反応せず,ウリナスタチン,ステロイドの投与も行ったが,冠動脈瘤を形成し,1 例は冠動脈瘤破裂で死亡した.症例 1 は 5 歳男児.川崎病の診断で他院へ 5 病日に入院し,同日からγ-グロブリン 1g/kgの投与を行ったが,心エコーで左右巨大冠動脈瘤を認めたため,当科を紹介され入院した.入院時から,心エコーで右7.7mm,左9.1mmの冠動脈瘤を認めた.7 病日からウリナスタチンの投与,8,9 病日に 1g/kgのγ-グロブリンの投与を行ったが,13病日に冠動脈破裂で死亡した.症例 2 は 2 歳男児.川崎病の診断で近医から当科を紹介され入院した.入院時冠動脈に異常所見は認めず,4 病日に 2g/kg,6~11病日まで400mg/kgのγ-グロブリンを投与,8~20病日までウリナスタチンの投与を行ったが,8 病日から冠動脈の拡張を認め,最終的に右7.7mm,左6.0mmの冠動脈瘤を形成した.症例 3 は 1 歳男児.川崎病の診断で近医から紹介され 3 病日に入院した.4 病日と 8 病日に 2g/kg,11~15病日に400mg/kgのγ-グロブリンを投与,13~15病日,18~19病日にステロイドパルス療法,9~17病日にウリナスタチンの投与を行ったが,11病日から冠動脈の拡張を認め,最終的に右12.8mm,左11.4mmの巨大冠動脈瘤を呈した.症例 1 の経験から,症例 2・3 では,冠動脈の拡張がみられた後,鎮静剤,降圧剤も併用し,冠動脈瘤破裂の回避を試み,結果的に突然死を予防できた.川崎病で巨大冠動脈瘤を形成した場合,川崎病の治療と同時に,沈静と降圧による冠動脈瘤破裂の予防が重要であると考えられた.これら 3 症例について文献的考察を加えて報告する.

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