P-I-F-1
フォンタン手術後遠隔期のtotal cavopulmonary connection(TCPC)転換術
岡山大学大学院医歯学総合研究科心臓血管外科1),岡山大学大学院医歯学総合研究科小児科2),岡山大学大学院医歯学総合研究科麻酔・蘇生科3),自治医科大学とちぎ子ども医療センター小児心臓血管外科4),岡山大学医学部・歯学部附属病院循環器疾患治療部5)
神吉和重1),赤木禎治5),石野幸三1),那須恵美1),小泉淳一1),岡本吉生2),大月審一2),岩崎達雄3),河田政明4),佐野俊二1)

【背景】フォンタン手術後の遠隔期に心不全,上室性不整脈などを生じ,total extracardiac cavopulmonary connection(以下TCPC)手術への転換術が必要となることがある.【目的】フォンタン術後遠隔期のTCPC転換術の有用性を臨床病理学的に検討する.【方法】当科で施行したフォンタン手術後TCPC転換術 6 例について,後方視的に検討を行った.解剖学的診断は,純型肺動脈弁閉鎖症 3 例,三尖弁閉鎖症 1 例,多脾症・共通房室弁 1 例,左室型単心室症 1 例であった.転換術の適応症(術前状態)は上室性不整脈 5 例,進行性心不全 2 例,血栓症 2 例,蛋白漏出性胃腸症 1 例であった.フォンタン手術から転換術までの期間は11年 3 カ月~21年 9 カ月(中間値13年 5 カ月),手術時年齢は16歳 1 カ月~29歳 2 カ月(中間値21歳 7 カ月)であった.転換手術は下大静脈を弁なしリングつき導管を用いて右肺動脈に吻合し,さらに必要に応じた追加手術を行った.1 例のみlateral tunnelを用いた.【結果】フォンタン術後10年を経過したあたりで,上室性不整脈の頻度が急速に増えていた.転換術後フォローアップ期間は,6 カ月~9 年 3 カ月(中間値 4 年 8 カ月)であった.早期死亡 0 例,遠隔期死亡 0 例.心不全NYHA I度 4 例,II度 2 例であった.恒久ペースメーカを必要としたものは 4 例であった.全例で転換手術前よりも不整脈の頻度の減少を認め,2 例では抗不整脈薬を中止することができた.術前胸腹水,蛋白漏出性胃腸症を認めた 1 例ではその改善を認めたが,完全に治癒するには至っていない.【結論】フォンタン術後,心外導管TCPC転換手術は良好な手術成績であった.血行動態改善により上室性不整脈が減少した.術前状態不良の症例では術後治療に難渋し,全身状態の著明な改善は期待できない.心機能・肝機能がreversibleと考えられる早期手術が望ましいと考えられた.

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