P-I-F-14
有茎自己心膜を使用した右室流出路再建術
徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部循環機能制御外科学1),徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部小児医学2)
北市 隆1),神原 保1),市川洋一1),来島敦史1),濱本貴子1),黒部裕嗣1),速水朋彦1),増田 裕1),森 一博2),枝川卓二2)

【背景と目的】当科におけるファロー四徴症(TF)に対する基本戦略として,チアノーゼの早期解除を目的に新生児もしくは乳児期早期の根治術を行っているが,肺動脈閉鎖(PA)を伴うTFにおいては患児の成長にも適応できる右室流出路の再建法が問題となる.今回,有茎自己心膜を使用した右室流出路再建(RVOTR)の中間期成績について検討を行った.【方法】1993年以降RVOTRに有茎自己心膜を使用した全14例を対象とした.疾患はTF 10例,DORV 1 例,truncus(III)1 例,TGA(III)1 例,Ross手術時のRVOTR 1 例で,手術時年齢13カ月(12日~3 歳),平均体重7.7kg(3.2~14kg)である.翻転した有茎自己心膜を右室流出路切開部と肺動脈の間の後壁に使用(初期の 3 例は有茎自己心膜と左心耳を介在),前壁は一弁付きパッチにてRVOTRを行った.術後,3~9 カ月時の心カテーテル検査および経時的に心エコー検査を行い,再建した肺動脈幹の形態,PR,PSの有無,右室圧等につき検討した.【結果】肺動脈幹の瘤化を 2 例に認めた以外は,計画された肺動脈幹径が維持された.PRは全例mild~moderate.branch PS(圧較差20~45mmHg)を 3 例,肺動脈幹のPS(圧較差58mmHg)を 1 例に認め,これらの症例で右室圧52~81mmHgと高値であったが,全例バルーンによる狭窄解除が可能であった.他の症例では有意なPSを認めず,右室圧も平均39.8mmHg(32~50mmHg)であった.【考察】有茎自己心膜を用いた右室流出路再建において,手術に伴うと考えられるPSの発生は少なく,新生児,乳児期早期に行える有用な術式と考えられた.しかし,PRに対する工夫(monocusp patchの改良),成長に伴う肺動脈幹の経時的変化については今後の検討が待たれる.

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