P-I-F-16
肺動脈閉鎖を伴ったファロー四徴症に合併した大動脈 4 尖弁の手術例
弘前大学医学部第一外科1),弘前大学医学部小児科2),弘前大学医学部保健学科3)
鈴木保之1),大徳和之1),皆川正仁1),福井康三1),福田幾夫1),上田知実2),江渡修司2),佐藤 工2),高橋 徹2),米坂 勧3)

大動脈 4 尖弁はまれな先天性心疾患であるが,今回肺動脈閉鎖を伴ったファロー四徴症に合併した大動脈 4 尖弁の症例に対し手術を行い良好な結果を得たので報告する.【症例】4 歳 9 カ月女児.肺動脈閉鎖を伴ったファロー四徴症に対して 2 回の姑息術の後,2 歳10カ月時に根治術を行った.この時術前検査で大動脈弁閉鎖不全(I)を認め,術中所見では大動脈弁は 4 尖弁であったが,大動脈閉鎖不全は放置の方針とした.4 歳 4 カ月時の検査で大動脈閉鎖不全は 3 度に増悪,手術適応と判断し入院となった.【手術】前 3 回の手術すべてが正中切開で行われており,癒着は非常に強固であった.通常の方法で人工心肺を確立,心停止下に大動脈を切開し大動脈弁を観察した.大動脈弁は少し小さめのaccessory cuspを有する 4 尖弁でHurwitz and Robertsらの分類で 1 または 2 で,形成は困難と判断し,SJM(リージェント):19mmで弁置換術を行った.前回右室流出路に使用した馬心膜パッチの拡大も認めたためこれを除去し,右室流出路の再形成も併せ行った.大動脈遮断時間:112分,人工心肺時間:211分であった.術後経過は順調でワーファリンによる抗凝固療法を行った後,術後22日目に退院した.【考察】ファロー四徴症に合併した大動脈 4 尖弁の症例は今回検索した中には認められなかった.大動脈 4 尖弁は成人期に大動脈閉鎖不全から診断されることが多く,Janssensらの報告では平均49歳(6~78歳)で今回の 4 歳 9 カ月での手術例は最年少例である.大動脈弁閉鎖不全が早期に進行した原因にファロー四徴症の解剖学的形態がなんらかの影響を及ぼした可能性があると考えている.術式に関してはaccessory cuspが他に比べ少し小さかったものの,4 尖ほぼ同じ大きさであり,中心性の逆流であったことから形成術は難しいと判断した.今回使用したSJM弁(19mm)は有効弁口面積1.7cm2で成人の体格まで適応可能であり,小児でも使用可能な人工弁であると考えられた.

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