P-I-G-2
重度肺高血圧を合併した左右短絡疾患に対する治療方針─酸素療法を中心に─
静岡県立こども病院循環器科
伴由布子,田中靖彦,鶴見文俊,芳本 潤,原 茂登,満下紀恵,金 成海,小野安生

【背景】肺血流増加型疾患患者,特にDown症候群合併例において気道狭窄が明らかでないにもかかわらず早期より肺血管抵抗(Rp)の上昇を呈し手術不適応と判断される場合がある.当院ではこのような患者に対し在宅酸素療法(HOT)を行い,心内修復術(ICR)への到達を図っている.【目的】Rpが上昇した肺血流増加型疾患に対する術前&術後HOTの効果を明らかにすること.【対象】1996年以降,HOTを行ったVSD,ASD,ECD,PDA 23例.21例はDown症候群.男児11例,女児12例.【結果】全例,心エコーでRp上昇による強いPHが疑われ,0~70カ月(中央値 1 カ月)で酸素投与が開始された.酸素開始前の心カテ(n = 10)ではQp/Qs:0.52~4.0(1.7 ± 1.0),Rp:2.9~21.0(9.4 ± 5.1),PA平均圧:29~77(56 ± 15)mmHgであった.酸素開始後,ICR前に行った心カテ(n = 16)ではQp/Qs:0.77~3.1(1.8 ± 0.7),Rp:1.8~12.1(5.9 ± 3.3),PA平均圧:19~56(40 ± 13)mmHgに改善していた.全例にICRが施行された.8 例は準備手術(PDA結紮,肺動脈絞扼)を経由した.ICR後の心カテ(n = 13)ではRp:1.8~24.8(7.4 ± 5.6),PA平均圧:11~83(34 ± 17)mmHgであった.19例でHOTは中止または中止予定で生存し,このうち13例ではPHを認めない.酸素使用期間は 1~44カ月(中央値11カ月)であった.2 例は中等度のPHのためHOT継続中.術後遠隔死亡は 2 例(PHの進行,肺炎各 1 例).1 例は心内修復術待機中.気道狭窄合併例,低出生体重例でHOT期間が長引いた.【結語】HOTによりエコー,カテで手術不適応と思われるRp上昇例でも心内修復術に到達でき,予後も概ね良好であった.

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