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S-II-5 |
アドレノメデュリンによる肺高血圧治療 |
国立循環器病センター研究所再生医療部1),国立循環器病センター研究所生化学部2)
永谷憲歳1),寒川賢治2) |
アドレノメデュリン(AM)は生体内に存在する最も強力な肺血管拡張ペプチドである.今回われわれはAMによる肺高血圧治療効果を,(1)経静脈的投与,(2)吸入投与,(3)血管内皮前駆細胞(EPCs)への遺伝子導入の各投与法で検討した.原発性肺高血圧症に対する経静脈的AM投与(0.05γ)は心拍出量を著明に増大させ(+44%),肺血管抵抗を減弱させたが(-32%),体血圧の低下を伴った.この問題点を解決するためにAMの経気道的投与について検討した.ジェットネブライザによるAM吸入(10μg/kg)は体血圧に影響を与えることなく,肺血管抵抗を低下させた.また,モノクロタリン肺高血圧ラットへの肺血管選択的AM遺伝子導入は,体血圧に影響を与えることなく,肺血管抵抗を減弱させ,生命予後を著しく改善させた.近年,肺動脈性肺高血圧症では,血管新生を伴わない血管内皮細胞の増殖,肺血管内皮機能の低下が肺高血圧の進展を助長する.したがって,vasodilatorの補充や血管新生を伴った肺血管内皮細胞の再生が,肺高血圧治療に結びつく可能性がある.血管内皮前駆細胞(EPCs)は血管障害部位への遊走能,血管再生能を持つことが知られている.われわれはEPCsへの新たな非ウイルス性遺伝子導入法を開発し,強力なvasodilatorであるAMの遺伝子をEPCsへ導入した.モノクロタリンラットに経静脈的に投与した遺伝子導入EPCsは肺細動脈や間質に遊走して血管を再生させ,肺血管抵抗を有意に低下させた.以上の結果より,AM投与は肺高血圧症に対する新たな治療法となることが示唆された. |
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