E-II-3
原発性肺高血圧症に対するシルデナフィルの効果
長野県立こども病院循環器科1),長野県立こども病院心臓血管外科2)
小林宏伸1),里見元義1),安河内聰1),松井彦郎1),長谷山圭司1),高山雅至1),金子幸栄1),原田順和2),打田俊司2),内藤祐次2)

【背景】ホスホジエステラーゼ 5 型阻害剤であるシルデナフィルは強力な肺血管拡張作用を有し,近年,原発性肺高血圧症(PPH)に対する治療薬として注目されている.【目的】PPHに対するシルデナフィル治療の急性効果および慢性効果検討する.【方法】当科における 3 例のPPH症例について後方視的に検討した.急性効果については心カテーテル検査でシルデナフィル投与後の心拍出量,肺血管抵抗,肺動脈圧などの血行動態指標を評価した.慢性効果については,心胸郭比,心エコーによる右室圧推定(TR),Tei-index,hANP,BNPなどの項目について検討した.【対象】症例 1:19歳女性,罹病期間11年.ベラプロスト,ACE阻害剤,ジゴキシン,利尿剤内服およびフローラン持続静注中.病状の進行に対し診断後10年目にシルデナフィル投与を開始した.症例 2:13歳男児,症例 3:14歳男児,いずれもベラプロスト,ACE阻害薬服用中.追加の治療手段として診断後12カ月でシルデナフィル投与開始.【結果】(1)急性効果:症例 1 においてシルデナフィル内服から120分後に肺血管抵抗が18.6から15.6(W.u.m2)に低下,右肺動脈圧/大動脈圧は0.95から0.76に低下した.心係数は2.9 l/min/m2から,内服30分後4.6 l/min/m2と増加,120分後に3.0 l/min/m2となった.(2)慢性効果:シルデナフィル内服開始後 2~12カ月で検討.心胸郭比,AcT/ETとTei-indexは著変なし.hANP/BNPは 2 例で正常範囲にあり,異常値を示した 1 例で120/188から51/72pg/mlへ改善した.推定右室圧/動脈圧比は 3 症例とも低下した(投与前1.13 ± 0.39から投与後0.91 ± 0.40).3 症例とも自覚症状は改善し,NYHA II°を維持している.副作用は顔面紅潮を認めたが一過性だった.【結語】PPHに対し,シルデナフィルは急性効果および慢性効果ともに右室圧の低下に寄与し,顔面紅潮以外の重篤な副作用はみられず,日常生活活動を改善できた.他のPPH治療薬との組み合わせ等については今後の検討を要する.

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