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E-II-4 |
自然治癒したアイゼンメンジャー症候群の病理組織所見について |
日本肺血管研究所1),岡山大学大学院医歯学総合研究科心臓血管外科2)
八巻重雄1),河田政明2),佐野俊二2) |
【症例 1】TGA,VSD,p/o Senning op 20歳男子.5 歳時閉塞性肺血管病変のため姑息的Senning手術を行った.最近徐々に心不全の傾向がみられ,昨年夏,19歳で心カテーテル検査を行い,Qp/Qs 3.78と高肺血流がみられた.肺血管抵抗は4.94単位であった.今回2004年10月の肺生検の所見では,もともとあった肺小動脈はすべて100μm以下のレベルで完全に閉塞していた.しかしながら,その末梢に新生した血管が至る所にみられた.この新生した肺小動脈を通して血流がみられ,肺血流量が増加したものと考えられた.アイゼンメンジャー症候群ではその終末期にはplexiform lesionsなどの側副血行路を通して細々と肺血流は維持されるが,本症例ではそうした所見はなく,すべて中膜の平滑筋細胞を持つ新生した肺小動脈により,むしろ肺血流量は増加して心不全の症状を呈していた.【症例 2】VSD,PDA 12歳男子.5 歳時に心カテでアイゼンメンジャー症候群と診断され,PDA ligationと肺生検が行われHE分類 3~4 度であった.翌年の心カテでもVSD閉鎖は不適応とされた.2004年に右左シャントがなくなり心カテでPp/Ps 0.94,Qp/Qs 2.1,PAR 5.4,酸素負荷にてQp/Qs 3.5と増加し,PAP 4.8単位と減少したことから根治手術適応をみるために肺生検を行った.肺小動脈の内膜の線維性肥厚による閉塞と末梢血管の中膜の肥厚の退縮がみられ,いわゆる絶対的手術不適応の所見であったが,閉塞の末梢に血流があり閉塞部の再開通が示唆された.【結論】これまでアイゼンメンジャー症候群自然治癒の報告はない.今回15年後と 7 年後に高肺血流となり臨床的に自然治癒と診断された 2 例を経験した.肺生検でTGA例では新生した血管が多数みられ,高肺血流の原因と考えられた.VSD例では 1 度閉塞した肺小動脈の再開通が強く示唆され,高肺血流の原因と考えられた. |
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