E-II-7
原発性肺高血圧症における肺血流シンチグラフィによる重症度評価の検討
東邦大学医学部第一小児科
高月晋一,嶋田博光,中山智孝,松裏裕行,佐地 勉

【目的】原発性肺高血圧(PAH)の重症度の評価における,肺血流シンチグラフィの有用性を検討すること.【対象】2001~2004年に当院に入院したPAHのうち,2 年以上の経過観察できた22名(男12例,女10例;年齢 4~18歳,中央値 7 歳)を対象とした.NYHA分類は 2 度17名,3 度 4 名,4 度 1 名,平均肺血管抵抗値(Rp)は16.7 ± 6.3単位,収縮期肺動脈圧(PA)は78 ± 32mmHg,平均心係数(CI)は3.2 ± 1.2 l/m2,平均BNPは142.5 ± 75pg/ml.【方法】99mTc-MAAを静注しSPECT像を検討した.肺野面積に対する血流分布面積比をD値とし,上・中・下肺野において各 1 スライスずつ選択した.各スライスにおけるD値(各),3 スライス総和のD値(総),上/下肺野のD値比を評価した.このD値から(1)血行動態指標との比較,(2)治療開始時と開始後 1~2 年目の変化,(3)転帰との対比を検討した.【結果】(1)シンチグラフィ施行時のD値(総)とPA,Rp,CIには相関がなかったが,BNP値(r = 0.57 p = 0.04)とは有意な相関を認め,NYHA分類(r = 0.50 p = 0.06)とは相関する傾向があった.(2)治療前後のD値(各)の変化は,上肺野 38 ± 12%から40 ± 18%,中肺野 32 ± 26%から30 ± 19%,下肺野 36 ± 18%から33 ± 22%と有意な変化を認めなかった.上/下肺野比は,16/22例では有意な変化を認めなかったのに対し,3/22例で上昇,3/22例で低下を示した.(3)経過観察中に 2 例の死亡例があり,うち 1 例は治療後もD値(総)は36%から42%と極めて低値を示した.【結語】肺血流シンチグラフィによるD値は,BNP値やNYHA分類と相関があり,PAHにおける重症度の新しい指標となる可能性が示唆された.

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