E-II-8
原発性肺高血圧症におけるALK1の遺伝子解析
東京女子医科大学先端生命医科学研究所遺伝子医学分野1),東京女子医科大学循環器小児科2),東邦大学医学部第一小児科3),東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究所研究部4)
八木寿人1),藤原摩耶2,3),古谷道子2),今村伸一郎4),中山智孝3),中澤 誠2),佐地 勉3),松岡瑠美子1)

【背景】原発性肺高血圧症(PPH)は,100万人に 1~2 人とまれであるが,現在でも予後不良な疾患であり,小児期発症例は全体の約25%を占める.PPHの疾患(候補)遺伝子として,bone morphogenic protein 受容体 2 型遺伝子(BMPR2),activin receptor like kinase 1(ALK1)の変異が,報告されている.過去 2 年間でわれわれは,日本人PPHにおいて,散発例 4 例(小児例 3 例,成人例 1 例,21%),家族例 1 例(33.3%)にBMPR2の変異を認めた.今回われわれはBMPR2の変異の認められない症例について,ALK1の遺伝子解析を行った.【対象および方法】先天性心疾患の合併,肺血栓閉塞症,その他の肺高血圧を生じる原疾患を除外し,PPHと診断された患者のうちBMPR2の変異の認められない小児散発例14例(男性 7 例,女性 7 例),成人散発例 1 例(女性 1 例),家族内発症例 3 家系の18例を対象とした.末梢血よりDNAを抽出し,ALK1遺伝子のエクソン2-10をPCR法にて増幅,直接シークエンス法を用いて解析した.【結果・考察】BMPR2の変異の認められない散発例15例中 2 例(小児散発例),家族例 3 例中 3 例にALK1の遺伝子変異を認めた.これらをBMPR2の遺伝子解析結果と総合的に判断すると,散発例では19例中 5 例(31.6%),家族例で 4 例中 4 例(100%)にBMPR2もしくはALK1の遺伝子変異を認めた.これらのことから,成人例だけでなく小児例でも同様にBMPR2遺伝子,ALK1遺伝子の異常に関する検討は重要であることが確認された.

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