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E-II-21 |
Fontan術後の胸水貯留に対するACE inhibitorの効果とその検討 |
埼玉県立小児医療センター心臓血管外科
宇野吉雅,中村 譲,野村耕司,山城理仁 |
【目的】Fontan術後の胸水貯留は入院期間の延長や退院後のQOL低下の原因となり,治療法についてはいまだ検討が続けられている.今回われわれはACE inhibitor投与の効果について検討を行ったので,若干の文献的考察を含め報告する.【方法】2003年 9 月~2004年12月に当施設にてFontan手術を施行し,術後の胸水貯留に対してACE inhibitorを投与した 5 例(mean age:4.4y,BW:14.6kg)について,術前dataおよび術後の胸水貯留の推移を検討した.症例の原疾患はDORV + hypo LV,asplenia + DORV,AVSD + hypo LV,TA(Ib),d-TGA(施行Fontan術式は,extracardiac conduit型 4 例,lateral tunnel型 1 例).【結果】手術,病院死亡なし.対象全例に術当日から第 1 病日に両側または右側の胸水貯留を認め,胸腔ドレナージを施行.対象症例中 4 例には脂肪制限のうえ,ACE inhibitor(enalapril,0.1mg/kg)の内服投与を開始したところ,迅速な胸水量の減少,消失を認め,平均術後10.2日に胸腔カテーテルの抜去が可能となり,脂肪制限解除後も胸水再貯留は認められなかった.他の 1 例は術後長期にわたる胸腔ドレナージ施行中の難治性の胸水貯留症例で,種々の治療に抵抗性であったが,ACE inhibitorの内服投与を開始したところ,約 2 週間にて胸水減少傾向を認め,4 週間後には胸腔カテーテルの抜去が可能となった.【考察】Fontan術後の胸水貯留に対しては,食事療法やソマトスタチン投与,胸膜癒着療法などに加え,ACE inhibitorの効果が近年報告されているが,その効果については有効,無効いずれの文献もみられている.今回の検討においては,術直後の 4 症例では胸水貯留の軽減傾向が認められ,さらには長期にわたる難治性の胸水貯留症例に対しても効果が得られたことにより,その有効性が示唆された.今後は臨床所見とともに投与前後の血中レニン・アンジオテンシン濃度等の測定を含め,さらなる検討が重要と考えられた. |
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