P-II-A-1
小児期心疾患における高感度CRP測定の意義
札幌医科大学小児科
富田 英,高室基樹,堀田智仙

【背景】高感度測定したCRPの高値が動脈硬化の危険因子であることが,成人領域で注目されているが,小児期における高感度CRP測定の意義については報告がない.【目的】心疾患を有する小児における高感度CRP測定の意義を検討する.【対象と方法】心疾患を有する小児60例でCRPを高感度測定した.疾患の内訳は冠動脈障害のない川崎病既往児(KDNCAL),冠動脈障害のある川崎病既往児(KDCAL),経皮的酸素飽和度90%未満のチアノーゼを有する先天性心疾患児(cyanosis),フォンタン手術の術後,左右短絡疾患などによりNYHA 2 度の心不全症状を有する先天性心疾患児(failure),治療の必要がない不整脈や小短絡の左右疾患児(control)の順に,16,15,20,13,8 例である.年齢分布は同様に14 ± 6 歳(平均値 ± 標準偏差),17 ± 7 歳,20 ± 8 歳,8 ± 7 歳,10 ± 4 歳であった.何らかの感染兆候,BMI 25以上の肥満,血清コレステロール220mg/dl以上,糖尿病,ASTまたはALT 40IU/l以上の肝機能障害,などを有するものは対象から除外した.【結果】各群の高感度CRPはKDNCAL 0.013 ± 0.006,KDCAL 0.024 ± 0.015,cyanosis 0.158 ± 0.107,failure 0.059 ± 0.047,control 0.037 ± 0.064で,cyanosisでは有意に高値であった.多変量ロジスティック解析ではcyanosisは年齢,性別,BMI,心不全の有無などから独立したCRP高値の危険因子であった.【考察と結語】成人の動脈硬化とは異なり,川崎病による冠動脈障害はCRP高値の危険因子とはなっていなかった.cyanosisはCRP高値の独立した危険因子であり,チアノーゼ性心疾患における血管内皮機能障害には慢性的な炎症機転が関与している可能性が示唆された.

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