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ベトナム・ベンチェ省における小児心臓病検診
静岡県立こども病院循環器科1),大津赤十字病院小児科2),大和高田市立病院小児科3),チョーライ病院胸部外科4),グエン・ディンチュー病院小児科5)
田中靖彦1),西岡研哉2),砂川晶生3),ブーフー・ビーン4),グエン・フック5)

【はじめに】われわれは1999年よりNGO「ベトナムの子供たちを支援する会」のボランティア活動に協力し,ベトナム南部のベンチェ省において小児心臓病検診を行ってきた.2004年夏で 5 回目の実施になり,これまでの活動を振り返り,ベトナム南部における小児心臓病診療の実態,今後の協力のあり方について報告する.【ベンチェ省について】ホーチミン市の南西86kmに位置し人口134万人,農業,漁業が中心産業で平均年収は約400USドルである.【方法】ベンチェ省立グエン・ディンチュー病院において,問診,身体所見,胸部X線,心電図,心エコーを含めた診療を行った.心エコーは2000年まではメカニカルセクタの白黒エコーを日本から持ち込んでいたが2001年に病院が最新式のエコー機器を購入したためカラードプラも使用可能となった.【結果】5 年間で280人の小児を診察した.62%が何らかの症状を有していた.221人(79%)に心臓病がみつかった.VSD,TOF,PDA,PSの順で頻度が高かったが,TAPVC,asplenia,AP windowのような重症例の年長児も診断された.また川崎病既往 1 例,リウマチ性と思われるMR 2 例も認めた.心臓病と診断されたうち,121例(55%)に手術適応あり,このうちPS,PDAの23例はカテーテル治療が可能と判断された.8 例は肺高血圧のため手術不可能,78例は手術不要であった.6 例は根治手術が終了していた.21例に処方を行った(プロプラノロール,利尿剤,ジゴキシン).【考察】5 年間の検診を通して有病率がかなり高く,またほとんどの患児は心臓病に関する診断がついていなかった.手術適応例も半数を超えたが,ベトナム南部で小児の開心術が可能な病院は 1 カ所のみであり,しかもprivate hospitalであるため手術料が高い(2,000USドル).年収400USドルの現状では手術適応があってもあきらめざるを得ない人がほとんどである.【結論】診断・手術が可能な医師の育成が重要と思われた.

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