P-II-A-6
単純型大動脈縮窄の臨床像
近畿大学医学部小児科1),近畿大学医学部心臓血管外科2)
池岡 恵1),篠原 徹1),三宅俊治1),竹村 司1),北山仁士2),佐賀俊彦2)

【目的】単純型大動脈縮窄の臨床像を明らかにする.【対象】当院で経験した単純型大動脈縮窄の小児15例.【方法】外来および入院診療録を用い,初診時から現在までの経過を以下の項目について検討した.初診時と診断時の年齢,診断の契機,手術年齢,合併疾患の有無,術式,術前と術後 1 カ月後の血圧,現在の血圧,降圧剤の内服,術後再狭窄の有無,であるが特に診断の契機や血圧の経過に注目した.【結果】(1)生後 1 カ月までに診断されたものは 5 例に過ぎなかった.(2)他の合併心疾患の追跡中,本症の存在に気付かれたものが 6 例存在した.(3)3 例が左室ポンプ機能の低下から心筋炎や心筋症を疑われて紹介された.術前に左室ポンプ機能低下を来した症例は 4 例あり,術後FS値は正常となったが,診断が遅れた 1 例は正常化が遅かった.(4)4 例は自覚症状がなく,心電図異常,高血圧,心雑音などが発見の契機となった.(5)合併疾患を伴うものが 4 例あり,合併疾患のために手術適応のない症例もあった.(6)治療された13例中 2 例を除いて端々吻合を施行した.(7)術前の血圧はほぼ全例で高値であったが,術後 1 カ月後にはいずれも改善した.しかし術前の数値まで戻ってしまう症例もあり,高血圧が持続している 1 例ではLVHストレインを認めている.5 歳以下で手術した症例の多くは,その後妥当な血圧が維持されているが,一方 7 歳以上の症例は術後の高血圧の改善が十分でない傾向にあった.(8)術後に再狭窄を来した症例はなかった.(9)当初,手術適応はないとされていた症例でも,その後手術が必要となった症例があった.【結論】(1)本症は発見されにくく,診断が遅れることが多い.(2)左室ポンプ機能の低下を来した症例は,縮窄を解除することによって心機能の改善を認めたが,診断が遅れるほど回復に要する時間も長くなる印象を得た.(3)7 歳以上の症例は術後の高血圧の改善が十分でない傾向にあり,5 歳以下での治療が望ましい.

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