P-II-A-7
小児における大動脈弁バルサルバ洞径の評価
大分大学医学部小児科
古城昌展,川野達也

【目的】Marfan症候群では大動脈弁バルサルバ洞拡大を来し,突然死の危険因子となるため,年齢に伴う健常児との比較が必要となる.そこで,健常児,Marfan症候群およびその他の心血管病変を持つ小児のバルサルバ洞径を計測した.【方法】対象は大分大学医学部附属病院小児科を受診し,正常と診断した対照群36例〔男21,女15,1~15歳(7.7 ± 4.2歳)〕と疾患群56例〔男29例,女27,1~15歳(8.6 ± 3.9歳)〕.疾患群は先天性心疾患26例(心室中隔欠損10,心房中隔欠損 3,大動脈弁狭窄 3,肺動脈弁狭窄 4,大動脈弁上狭窄 3,修正大血管転位 + 心室中隔欠損 1,末梢性肺動脈狭窄 1,部分肺静脈還流異常 1),先天性心疾患術後 7 例(心室中隔欠損術後 3,心房中隔欠損術後 2,ファロー四徴 + 肺動脈閉鎖術後 1,ファロー四徴 + 肺動脈欠損術後 1),冠動脈病変を伴う川崎病 6 例,胸郭変形(漏斗胸,扁平胸)2 例,僧帽弁逸脱 5 例,不整脈 7 例,心筋緻密化障害,Marfan症候群,起立性調節障害がそれぞれ 1 例であった.胸部単純X線撮影,12誘導心電図,心臓超音波検査を施行した.バルサルバ洞径は心臓超音波検査において傍胸骨大動脈長軸断層図から収縮期径(Ds)を計測し,体表面積(BSA)を独立変数とするDsの回帰式を求めた.【成績】(1)正常対照群のDs予測値は,Ds = 20.940 + 10.001ln(BSA),相関係数r = 0.919で求められた.(2)疾患群においてDsが正常対照群における予測値の120%以上を呈した疾患は,ファロー四徴 + 肺動脈閉鎖術後(152%),ファロー四徴 + 肺動脈欠損術後(158%),修正大血管転位 + 心室中隔欠損(125%),Marfan症候群(138%)がそれぞれ 1 例ずつであった.(3)疾患群においてDsが正常対照群における予測値の80%以下を呈した疾患は,大動脈弁上狭窄を呈するWilliams症候群 1 例(79%)であった.【結論】Marfan症候群,ファロー四徴ではバルサルバ洞拡大を,大動脈弁上狭窄を呈するWilliams症候群では縮小を認めた.

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