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乳児期早期より大動脈弁右冠尖逸脱を認めた肺動脈弁下型心室中隔欠損症の 2 例
榊原記念病院小児科1),自治医科大学小児科2)
平久保由香1,2),朴 仁三1),藁谷 理1),嘉川忠博1),西山光則1),畠井芳穂1),森 克彦1),村上保夫1)

【はじめに】肺動脈弁下型の心室中隔欠損症(VSD)にはしばしば大動脈弁逸脱(RCCP)を合併することが知られている.今回,われわれは乳児期早期よりRCCPを認めたVSDの 2 症例を経験したので報告する.【症例】症例 1 は 1 歳 2 カ月,男児,体重11.4kg.日齢 3 に心雑音を指摘され,心エコー検査(UCG)にて肺動脈弁下型のVSD,RCCPを認めた.1 カ月時,当院紹介受診.大動脈弁閉鎖不全(AR)は認めず,外来で経過観察していた.10カ月時,心臓カテーテル検査施行.肺動脈弁下型のVSDで肺体血流比は1.0,RCCPを認めたが,ARなし.1 歳 2 カ月時にVSDパッチ閉鎖術施行.症例 2 は 5 カ月,男児,体重7,095g.出生直後より心雑音を指摘され,2 カ月時のUCGにて肺動脈弁下型のVSD,RCCPを認めた.3 カ月時,当院紹介され,心臓カテーテル検査施行.肺動脈弁下型のVSDで肺体血流比1.0,RCCPあり,ARなし.5 カ月時,VSDパッチ閉鎖術施行.【術中所見】症例 1 は前後径約4.5mmのVSDで肺動脈弁左尖右尖の交連直下,症例 2 は前後径約 5mmのVSDで肺動脈弁右尖直下.いずれも欠損孔は中等度の大きさ,形は横長で前後径の方が長く,高度のRCCPを認めた.術後のUCGでは大動脈弁の変形やARはみられず,術後経過は良好である.【まとめ】VSDによるRCCPで,大動脈弁の変形が高度になりARを伴った場合,VSD閉鎖術のみでは弁の変形やARが改善せず,大動脈弁置換術が必要になる可能性がある.今回の 2 症例では,乳児期早期にRCCPを認めた.肺動脈弁下型のVSDでは早期よりRCCPを伴うことがあり,UCGによるRCCPの早期診断と注意深い経過観察が重要と考えられる.

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