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徐脈頻脈症候群に対して人工ペースメーカ植え込み術を施行した 1 幼児例
熊本市立熊本市民病院小児循環器科1),熊本市立熊本市民病院小児心臓外科2),熊本赤十字病院小児科3)
八浪浩一1),後藤 啓1),中村紳二1),小田晋一郎2),鶴原由一2),塩川佑一2),西原重剛3)

【はじめに】小児期の基礎心疾患のない洞不全症候群はまれである.今回,心房粗動を合併した基礎心疾患のない洞不全症候群の 3 歳男児に対して心房ペーシングの人工ペースメーカ植え込み術を施行したので報告する.【症例】妊娠24週から胎児徐脈(90~110/分)を認めた.胎児の心不全徴候はなく,在胎週数38週 4 日,出生体重3,595g,正常分娩にて出生.生後の心拍数は70~110/分.洞不全症候群の診断でフォローされた.乳児期後期から心拍数は50~90/分と徐脈傾向が増強したが,心不全症状やAdams-Stokes発作なく経過した.1 歳頃から上室性期外収縮の連発が,3 歳時から発作性心房粗動が出現した.基本調律は房室接合部調律で心拍数は60/分前後.ホルター心電図で半日以上の長時間の心房粗動を認めた.心エコー検査では左心室が軽度拡大も駆出率は正常.電気生理学的検査にてHis-Purkinje間の軽度伝導障害の所見を認めたが,心房ペーシングで問題ないことを確認し人工ペースメーカ植え込み術を施行した.術後は上室性期外収縮と心房粗動は完全に抑制された.術前軽度上昇していたBNP(99.1pg/ml)とANP(64pg/ml)は,術後に正常化した.【考察】心房ペーシングにより心拍数を上昇させたことで心房筋は電気学的に安定化し心房粗動が抑制されたと考えられる.心房粗動に対するアブレーションも治療の選択肢と思われたが,ペースメーカ治療を優先し良好な結果を得た.本症例では房室伝導障害の合併もあり,今後注意深い経過観察が必要と思われる.

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