P-II-B-2
バソプレッシンによる医原性SIADHの報告─早期発見のための留意点─
埼玉医科大学小児心臓科
熊谷晋一郎,先崎秀明,熊倉理恵,岩本洋一,杉本昌也,石戸博隆,増谷 聡,松永 保,竹田津未生,小林俊樹

【目的】われわれはこれまで血管拡張による血圧低下を来した小児に対するバソプレッシン投与の有効性について報告してきた.しかしその後,バソプレッシン投与中に,臨床的に問題になるようなSIADHを呈した 3 例を経験したので報告する.また同時に,SIADHを早期に発見するためのモニタリングの重要性についても指摘したい.【SIADH鑑別のwork up】低浸透圧血症があり,尿中浸透圧が不当に高く,尿酸値が低下傾向(NEJM1979)の場合SIADHが強く疑われる.副腎機能不全や甲状腺機能低下は血液検査で別途鑑別する.中枢性の病変があり,エコーなどで明らかなhypovolemiaがあるのに,低尿酸血症と尿中高浸透圧がある場合脳性塩類喪失症候群と診断し区別する.【方法】バソプレッシン投与中の全症例に対して,経時的に血清のNa,浸透圧,ADH濃度,UA/BUN/Creと,尿中のNa,浸透圧,UA/BUN/Creを測定する.尿量低下や低浸透圧血症が臨床的に問題になる場合,上記の方法で鑑別を行い,SIADHが疑われる場合にはピトレッシンを中止し,改善の有無を評価する.【結果】明らかなSIADHを来した 3 例は上記のモニタリングで十分に鑑別された.そのほかの症例でもsubclinicalなSIADH様の変化は多くの症例で認められたものの,その中にはピトレッシンの中止によって血圧が下がり,かえって尿量が減る症例もあった.【まとめ】バソプレッシン使用中には低用量でも血清のNa,浸透圧,ADH濃度,UA/BUN/Creと,尿中のNa,浸透圧,UA/BUN/Creをモニタリングし,SIADHの早期発見に努めるべきである.しかしSIADHに合致する所見があっても,中止によって臨床的な改善が保証されるわけではなく,その決定には総合的な判断が重要である.

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