P-II-B-4
リンパ管損傷・静脈閉塞により術後乳び胸を来した症例の臨床的検討
京都府立医科大学大学院医学研究科発達循環病態学1),京都府立医科大学附属小児疾患研究施設小児心臓血管外科2)
藤本一途1),田中敏克1),小林奈歩1),浅妻右子1),梶山 葉1),奥村保子1),白石 公1),糸井利幸1),浜岡建城1),山岸正明2)

【背景】乳び胸は先天性心疾患術後の0.25~2.5%に合併し,原因としてa.リンパ管損傷・静脈閉塞,b.中心静脈圧の上昇の 2 つに大別される.【目的】術後乳び胸を来した症例のうち,リンパ管損傷・静脈閉塞による乳び胸の治療期間の予測因子を明らかにする.【対象と方法】リンパ管損傷・静脈閉塞による乳び胸と診断した 4 症例を後方視的に検討.【結果】症例 1(MA,VSD,IAA).DKS術後に両側の乳び胸が出現.左上肢からの造影で無名静脈閉塞を確認し,リンパ管シンチで左上縦隔に集積を認めたため無名静脈閉塞が乳び胸の原因と診断.MCT milk,完全静脈栄養(TPN),オクトレオチド投与により60日目に治癒.症例 2(CoA complex,SAS).一期的根治術施行後に両側の乳び胸が出現.右上肢造影にて右鎖骨下静脈閉塞を確認.MCT milk,TPNを使用し45日目に治癒.症例 3(PA with IVS).rt-m-BT shunt術後に右側の乳び胸が出現.リンパ管シンチで右上縦隔に集積あり.MCT milk,TPNを使用し30日目に治癒.症例 4(TGA).Jatene術後に両側の乳び胸が出現.MCT milk,TPN,オクトレオチドを使用したが胸水流失は止まらず,1 歳時に感染・消化管出血を起こして失った.右上肢造影にてSVC閉塞を確認しリンパ管シンチでも右上縦隔に集積を認めた.静脈・リンパ本管がより中枢で損傷していた症例ほど,治療期間を要した.【考察】解剖学的により中枢のリンパ管損傷・静脈閉塞を来した症例の方が側副リンパ管が形成されにくいため,より治療期間を要したと推察した.【まとめ】術後乳び胸が出現した際には,末梢静脈造影・リンパ管シンチにて早期にリンパ管損傷・静脈閉塞の有無,部位を確認することが早期のオクトレオチド投与や外科的介入などの積極的な治療選択の決定・予後予測に有用である可能性が示唆された.

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