P-II-B-5
小児重症 3 症例における心拍変動解析
埼玉県立小児医療センター総合診療科
関島俊雄

【緒言】患者の重症度評価の方法として,心拍変動の解析が各領域で使用され始めている.周産期領域ではNST(non stress test)における心拍数基線細変動の消失が胎児仮死の徴候として考えられ,成人領域では頭蓋内出血の患者で心拍変動解析により重症度の振り分けが可能などの報告がみられている.【目的】小児期おいて,重症患者の評価として心拍変動解析が有用であるか検討する.【対象】当科で入院治療を受けた症例でグラスゴーコーマスケール 3 点で重症と主治医が判断したなかで検査の同意が得られた 3 例.検査施行時にはいずれも人工呼吸管理下で対光反射は消失し,検査施行後10日以内に死亡している.症例の年齢と疾患は以下の通り.症例 1:1 カ月女児,消化管穿孔・敗血症性ショック.症例 2:1 歳女児,超低出生体重児・慢性肺疾患の急性増悪で重度肺高血圧症・多臓器不全.症例 3:1 歳女児,HHV-6 による急性脳症・多臓器不全・DIC.【方法】心電図モニターからの波形を非侵襲的にAD変換しフラクレット(大日本製薬社)を用いてパーソナルコンピュータにRR間隔時系列データとして取り込み解析した.【結果】ローレンツプロット解析では,一般的に座標軸上45度の線上に原点から遠ざかるにつれてふくらみを持つ涙型の分布を呈するが,広がりがなく線上に分布していた.スペクトル解析では,高周波数領域(HF)および低周波数領域(LF)ともに低下していた.【考察】小児期においても重症患者で心拍変動の異常が認められた.このような心拍変動の異常がどの時期からみられているかは現時点では不明であるが,症例を集積し検討する必要がある.【結語】心拍変動解析は非侵襲的であり,小児の重症患者においても従来とは異なった視点から病態管理が可能である.

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