P-II-B-7
小児先天性心疾患患者の心不全に対するenarapril maleate(E),losartan potassium(L)併用療法の経験
榊原記念病院小児科1),榊原記念病院外科2)
嘉川忠博1),朴 仁三1),藁谷 理1),西山光則1),畠井芳穂1),村上保夫1),森 克彦1),三森重和1), 安藤 誠2),高橋幸宏2)

【目的】成人心不全に対するE,Lの比較検討や併用療法は行われているが,小児では使用経験に乏しい.近年当院において房室弁逆流および肺血流増加による心不全症例に対し,E,L併用療法を行った経験を報告する.【症例】(1)3 歳男,右室性単心室,肺動脈閉鎖,主要体-肺側副動脈.重度共通房室弁逆流による心不全に対し,E(0.45mg/kg/日)投与下にLを0.3mg/kg/日から開始し1.25mg/kg/日まで増量したところ心不全症状は改善しCTRが90%から65%に減少.(2)2 歳女,多脾症候群,完全型心内膜床欠損,単心房.1 歳時心内修復術施行するも僧帽弁逆流が残存進行し心不全症状悪化.E(0.25mg/kg/日)を投与していたが,下痢,嘔吐を契機に急性腎不全となった.腎不全の回復を待ってL(0.5mg/kg/日)を開始したが,結局11日後に僧帽弁置換術を行った.(3)7 カ月女,完全型心内膜床欠損,大動脈縮窄,左室低形成.1 カ月時大動脈再建術兼肺動脈絞扼術を施行するも大動脈弁下狭窄および共通房室弁逆流が進行し,Eを開始.5 カ月時にKeye-Stansel + 両方向性Glenn手術を施行したが,中等度の共通房室弁逆流が残存したためE(0.3mg/kg/日)に加えL(0.5mg/kg/日)を併用したところ,CTR 61%から53%まで減少.(4)4 カ月男,両大血管右室起始,左室低形成,肺動脈狭窄,三尖弁逆流.低酸素発作に対し 2 カ月時に右ブラロックータウジッヒ短絡手術施行.その後肺血流増加および三尖弁逆流の増悪がみられたため,E(0.3mg/kg/日)に加え 4 カ月時にLを0.38mg/kg/日から開始し1.15mg/kg/日まで増量するも心不全のコントロール不良で,6 カ月時両方向性Glenn手術施行.【まとめ】4 症例は房室弁閉鎖不全を伴う心不全で,EにLを併用した.心不全,心拡大が改善したものが 2 例,有効な心不全コントロールができず両方向性Glenn手術を行ったものが 1 例,評価不能な症例が 1 例であった.EとLの併用療法は,房室弁逆流による小児の心不全に対して有効な可能性がある.

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