P-II-B-8
PGE1製剤にてStevens-Johnson症候群様症状を呈したファロー四徴症・肺動脈閉鎖症例
東京医科歯科大学医学部附属病院小児科
東 賢良,佐々木章人,脇本博子,土井庄三郎

動脈管(PDA)依存性先天性心疾患に使用されるPGE1製剤の副作用として,発熱,無呼吸,下痢,肝機能障害や血管痛などが頻度的には多い.われわれは肺動脈閉鎖(PA)を伴うファロー四徴症(TOF)の11カ月女児にPGE1製剤を使用し,小児ではかつて企業報告では 1 例もないStevens-Johnson症候群(SJS)様症状を経験したので報告する.患児は11カ月時に発熱を主訴に近医を受診した際,初めて心雑音とチアノーゼを指摘され,当科に紹介入院となった.酸素飽和度(SpO2)68%と顕著なチアノーゼを呈し,高流量酸素投与で改善しなかった.心臓超音波検査にてPDAを伴うTOF,PAと診断し,酸素投与を中止してlipo-PGE1を開始したがSpO2は改善しなかった.低酸素性肺血管収縮の病態を考え,lipo-PGE1投与下で少量酸素投与を再開し,SpO2は80%台に上昇し,心臓超音波検査でPDAの血流増加を確認した.全身状態は安定していたが,入院後 8 日目より強い炎症反応と白血球増多を伴う高熱および麻疹様発疹を呈した.当初は感染源不明の混合感染症と考え数種の抗生物質を変更投与したが,症状・検査所見ともに改善しなかった.lipo-PGE1の脂質成分によるアレルギー反応を考え,入院後19日目よりPGE1-CDに変更したが同様であった.粘膜症状はなかったがPGE1によるSJS様症状と考え,SpO2の低下に注意しPGE1-CDを漸減した.減量とともに症状および検査所見は改善した.入院後36日目に心臓カテーテル検査を行い,主要大動脈肺動脈側副血行(MAPCA)を伴うTOF,PAと確定診断し,PGE1-CDを完全に中止した.中心肺動脈は存在せず,MAPCAの形態から手術は困難と判断し,在宅酸素療法にて現在経過観察中である.過去のPGE1製剤によるSJS成人例および一般的SJSに関して文献的に検討した.

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