P-II-B-9
バルーン血管拡大術により動脈管再開通を起こしたnative CoA(未手術大動脈縮窄症)症例の検討
長野県立こども病院循環器科,長野県立こども病院心臓血管外科
高山雅至,小林宏伸,金子幸栄,長谷山圭司,松井彦郎,安河内聰,里見元義,内藤祐次,打田俊司,原田順和

【背景】未手術大動脈縮窄症(n-CoA)に対するバルーン血管拡大術(PTA)施行後,閉鎖していた動脈管(DA)が再開通する症例を時に経験する.【目的】PTAによるDA再開通頻度と,再開通例の特徴および問題点を明らかにすること.【対象】当院で1995~2004年にPTAを第一治療としたn-CoA 11例.【方法】DAが再開通した群(R群)としなかった群(N群)に分け,在胎週数,出生体重,年齢,施行時体重,造影上のCoA径,拡大率,CoA/DAo径,IVUSの面積変化率,CoAの再発などにつき診療録から後方視的に検討した.【結果】11例中 4 例(36%)でDAの再開通を認めた.R群(4 例)とN群(7 例)を比較すると年齢はR群 4 ± 6 カ月に対しN群16 ± 5 カ月(p < 0.05:*),施行時体重はR群3.7 ± 2.0kg,N群7.6 ± 5.5kg,施行前CoA径はR群1.5 ± 0.4mmに対しN群2.7 ± 1.0mm(*),施行前圧較差はR群39 ± 10mmHgに対しN群24 ± 12mmHg(*),圧較差改善度はR群Δ32 ± 16mmHgに対しN群Δ16 ± 11mmHg(*),拡大率はR群2.8 ± 0.8に対しN群1.9 ± 0.4(*)であった.R群に心不全の悪化や動脈瘤は認めず,再開通したDAはその後(1.8 ± 1 カ月後)すべて閉鎖したが,3 例でCoAが再発し,1 例手術(EAA),1 例re-PTAとなった.N群のCoA再発は 1 例のみであった.【考察および結論】n-CoAに対するバルーン拡大術の際のDA再開通は,動脈管組織が断裂しまたは拡大されて起こると考えられる.DA再開通のrisk factorは施行時 1 カ月以下の若年者,施行前 2mm以下のCoA径,施行前30mmHg以上の圧較差であった.再開通例の問題点は遠隔期の再狭窄率が高いことであり,より注意深い経過観察が必要と思われた.

閉じる