P-II-B-11
体肺動脈シャント閉塞に対してバルーン拡大を必要とする臨床像の検討
社会保険中京病院小児循環器科1),社会保険中京病院心臓血管外科2)
西川 浩1),松島正氣1),加藤太一1),久保田勤也1),櫻井 一2),加藤紀之2),長谷川広樹2),澤木完成2),櫻井寛久2),杉浦純也2)

【背景】チアノーゼ性心疾患では低酸素血症の軽減や低形成肺動脈の発育を目的として,体肺動脈シャント手術を行われ,症例によってはそれが最終手術となることもある.また,臨床の場ではこれらのシャント血管が狭窄,閉塞し,バルーン拡大(BAP)を必要とされることがある.【目的】体肺動脈シャント狭窄,閉塞に対してバルーン拡大を必要とした症例の臨床像を検討すること.【対象と方法】社会保険中京病院にてBlalock-Taussigシャント(BT)にバルーン拡大術(BAP)を試みた症例,1992年12月以降の14例(計17回)を対象として診療録を後方視的に検討.【結果】男性 8 例,女性 6 例.原疾患はTA 2 例,PA,VSD 4 例,SV,PSまたはPA 6 例(うち 3 例にasplenia),TOF 1 例,cTGA,PS 1 例.BAPの対象となったシャントは人工血管が11例〔バルーン径は中央値100%(60~120)〕,古典的BTは 3 例.左側 8 回,右側 9 回.施行理由では無酸素発作(意識消失,心拍停止を含む)4 回(23%),肺動脈の発育を促したもの 4 回(23%)で,残りはチアノーゼの増強と心雑音の消失だった.BT設立からBAPに至るまでの期間は中央値1.8年.10例で血栓溶解療法を併用.1 例で開存を得られず,1 例で血栓が残存.1 例で高肺血流となった.転帰としては段階的にnext stage opeに移行できたものが 7 例(ただし 1 例は待機中),BAP後 1 カ月以内に追加手術を必要としたものが 5 回(29%),BTを最終手術として遠隔死したものが 3 例であった.【結語】BTシャント閉塞に対するBAPはチアノーゼの改善のみならず,段階的手術を遂行するために有意である.一方,高度低形成肺動脈ではそれのみでは効果が弱く,BAP無効や早期に手術を要するものが29%にあった.BTが最終手術となる症例でのBAPは延命のために必要と思われた.

閉じる