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海外で経カテーテルASD閉鎖術を施行した 2 例─その費用,方法に対する考察─
久留米大学医学部小児科1),岡山大学医学部・歯学部附属病院循環器疾患治療部2),イリノイ州立大学シカゴ校小児科3),飯塚病院小児科4)
家村素史1),岸本慎太郎4),籠手田雄介1),伊藤晋一1),工藤嘉公1),姫野和家子1),須田憲治1),松石豊次郎1),赤木禎治2),カルロス・ルイツ3)

心房中隔欠損症(ASD)に対する治療として,Amplatzer Septal Occluder(ASO)を用いる方法は海外では広く行われており,その治療成績,低い合併症発生率が確認されているが,日本ではまだ認められた治療法ではない.今回,われわれは自費での治療を希望され,渡米された症例を 2 例経験した.【症例 1】40歳男性,職場検診にてASDと診断,手術を勧められたが,カテーテル治療の可能性を知り,当科受診.経食道エコーにて欠損孔は31mmでanterior rimは欠損していたが,他のrimは十分なサイズを認め,カテーテル治療は可能と判断した.【症例 2】63歳男性,40年ほど前にASDと診断されていたが放置,62歳ころより不整脈,全身倦怠感出現し近医受診,カテーテル診断にて20mmの欠損孔を認めた.インターネットで同治療を知り,当科受診.経食道エコーにて欠損孔は21mmと8mmの 2 カ所が確認されたが,rimは十分なサイズあり,治療の適応ありと判断した.2 症例とも局所麻酔のみで,まず心腔内エコーガイド下でバルーンストレッチを行い,再度欠損孔の計測を行った.その結果,症例 1 には38mmのASOを,症例 2 には22mmと18mmの 2 個のASOを留置し,完全閉鎖を確認した.透視時間は症例 1 が 7 分,症例 2 が12分で,造影は 2 症例とも行っていない.症例 1 は術後に心房粗動を認め,1 日入院となったが,症例 2 は当日退院となった.費用は症例 1 が約28,200ドル,症例 2 が約35,300ドルであった.両症例とも,6 カ月間のPlavix内服,1 年間のアスピリン内服を行い,現在,特に症状なく経過観察中である.両症例とも結果には非常に満足されたが,高価な治療であること,また言葉の問題,早期の退院など,経済的,精神的,肉体的負担があったと思われる.また日本では使用できない心腔内エコーや薬剤があり,今後,日本での治療が始まる際には検討して行くべき問題と考えられた.

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