P-II-B-14
Blalock-Park術後狭窄に対しステント留置術を施行した 1 カ月乳児例
豊橋市民病院小児科1),豊橋市民病院循環器内科2),豊橋市民病院心臓血管・呼吸器外科3)
安田和志1),野村孝泰1),中島義仁2),村山弘臣3),渡邊 孝3)

症例は生後 1 カ月,体重2,960gの男児で胎児期よりTAを疑われた.出生後TA(IIc)+ IAA(A)と診断,日齢 4 に肺動脈絞扼術および大動脈弓再建術施行.大血管転位の大動脈弓と下行大動脈との距離から,再建にはBlalock-Park法を選択した.術後の上下肢血圧差30~40mmHg程度で,次第に多呼吸・多汗・尿量減少などの心不全症状を呈した.SpO2は90%台前半を示し,胸部X-Pでは心拡大と肺血管陰影増強の所見を認めた.大動脈弓吻合部狭窄による心後負荷および解剖学的大血管関係から,相対的に高肺血流を来したと考えられた.日齢32に術後狭窄(最狭窄部1.1mm,大動脈弓部3.1mm)に対し,Sasuga(Boston)4mm20atmでバルーン拡大術施行,waist消失しなかったが圧較差38→20mmHgに低下した.その後,尿量増加と呼吸状態改善を認めたが効果は一時的で,数日後には再び尿量減少,ついには無尿に至った.日齢39のカテーテル検査では,狭窄部圧較差60mmHgに増大.cutting balloon(Boston)3.25mmで予備拡大の後,Sasuga 4mm20atmで拡大したがやはりwaist消失せず,圧較差42mmHgと改善は極軽度であった.IVUSでも最狭窄部の内径,面積に有意な改善を認めなかった.早期の再狭窄の可能性が高いと判断し,冠動脈用driver stent(Medtronic)4mm × 10mmを留置し,Sasuga 4mm20atmでさらに拡大した.ステント留置後,下行大動脈圧は34/29(31)→62/34(43)mmHgに上昇した.その後の全身状態は良好で,胸部X-P所見も改善,SpO2低下傾向を認めた.今回のバルーン,ステントによる血管拡大術は大腿動脈から 4Frシース挿入で可能であり,生後早期の再開胸手術を回避する方法として有用であると考えられた.

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