P-II-B-15
大血管転位症のラステリー術後に発病した気管支軟化症に外ステント術を施行した 1 例
横浜市立大学医学部第一外科1),横浜市立大学医学部付属市民総合医療センター小児科2),松戸市立病院心臓血管外科3)
寺田正次1),高梨吉則1),磯松幸尚1),飛川浩治1),岩本眞理2),瀧聞浄宏2),西澤 崇2),赤池 徹2),永瀬裕三3)

【目的】d-TGA(型)に対するRastelli術後に重篤な換気不全を呈し,両側気管支軟化症の診断で両側外ステント術を施行した症例を経験した.【症例】1 歳10カ月,男児.先行手術は右BT shunt(4-mm ePTFE graft,月齢 1 カ月),左肺動脈狭窄の経皮的バルーン拡張術とBAS(4 カ月),左BT shunt(4-mm ePTFE graft,8 カ月).術前心臓カテーテル・心血管造影検査にて平均肺動脈圧13~14mmHg,PA-index 168,左/右心室拡張末期容積118/146% of N.手術は体外循環下に両側ePTFE graft結紮,inlet VSDから大動脈弁までの心室内ルート作成,ePTFE graftによる左肺動脈パッチ拡大術と 1 弁付き自己心膜ロールによる心外導管作成術を施行.術後LOSによる肝腎不全を併発.人工呼吸器離脱を図るも呼吸困難と高二酸化炭素血症を呈し,気管支鏡検査により気管下部の右後方からの拍動性圧迫,右主気管支分岐部と左主気管支末梢側の狭窄と自発呼吸による閉塞所見を認めた.術後 2 カ月時に左開胸にて16-mmリング付きePTFE graftを用いた外ステントを,その 3 週間後に右開胸にて気管下部から右主気管支に同様の外ステント術を施行した.【結果】術後の気管支鏡検査,CT検査にて外ステント部の気管・気管支の良好な開存を確認したが,長期の鎮静療法,人工呼吸器管理による呼吸筋疲弊のため,術後 4 カ月の現在も呼吸器管理を余儀なくされている.【考察】心内修復術後の気管支軟化症発病は極めてまれであるが,術後の心臓容量の相対的増加,上行大動脈と残存した右ePTFE graftによる気管下部・右主気管支の間接的圧迫がおもな誘因と考えられた.本疾患には外ステント術による積極的な手術介入を考慮する必要がある.

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