P-II-B-16
心嚢カテーテル留置によるlate tamponadeの予防効果について
北海道大学医学部循環器外科1),北海道大学医学部小児科2)
橘  剛1),若狭 哲1),杉木宏司1),窪田武浩1),村下十志文1),安田慶秀1),武田充人2),上野倫彦2),村上智明2)

【背景】開心術後のlate tamponadeは約0.8~3%に生じるとの報告があり,時に致命的となりうる.先天性領域ではpost pericardiotomy syndrome,chylopericardiumに関しての報告を散見するが,その予防・治療法は確立されていない.【方法】2003年 8 月~2005年 2 月に当科においてVSDおよびASD根治手術を行った40例に対しlate tamponade予防法として心嚢内カテーテル長期留置による心嚢液drainageを試みた.手術時に14G.メディカットチューブを心嚢内に留置し心膜は可及的に閉鎖,術後は 1 日 1 回吸引し 7 病日に抜去した.術後経過中の心嚢液量,発熱,白血球数,炎症反応の推移を評価,7 病日の心嚢液に関してIL-1,IL-6,TNFαを測定.術後在院日数を留置以前である2001年 7 月~2003年 4 月の22例と比較した.【結果】年齢7.8 ± 6.5歳,身長120.7 ± 30.5cm,体重27.5 ± 19.8kg,疾患VSD 22例,ASD 18例.心嚢液量peakは 6 病日で2.5 ± 6.3ml,留置期間7.6 ± 1.4日.全例中 3 例は 7 病日の心嚢液を10ml以上認めたため,最長13病日まで留置を継続した.7 病日IL-1 45 ± 45pg/ml,IL-6 10,678 ± 12,823 pg/ml,TNFα 9.75 ± 19.5 pg/ml.術後在院日数11.1 ± 2.8日で,カテーテル留置以前12.5 ± 3.6日と比較して短い傾向(p = 0.10).術後カテーテル留置期間が 7 日以内の症例を検討すると,術後在院日数は10.4 ± 2.5日でカテーテル留置以前と比較して有意に短かった(p = 0.02).カテーテル閉塞,出血,感染,不整脈等の留置による合併症なし.退院後のtamponadeなし.【結論】late tamponadeは術後 6~13日に発症するとの報告があるが,心嚢液に含まれる炎症性物質により心嚢液貯留が増悪する可能性を考慮すると,心嚢液排出のpeakである 6 病日前後の心嚢液吸引は有効であり,late tamponade予防に役立つ.メディカットチューブは長期留置でも患者に大きなstressを与えることなく安全に使え,感染・閉塞等なく,術後在院日数を短縮させた.

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