P-II-C-2
心房中隔欠損患者におけるatrial natriuretic peptide 静注に対する血行動態の変化について
大阪大学大学院医学系研究科小児発達医学講座小児科
青木寿明,黒飛俊二,小垣滋豊,高橋邦彦,那須野明香,成田 淳,大薗恵一

【目的】atrial natriuretic peptide(ANP)は小児においても心不全管理に頻用される.しかしながら先天性心疾患を持つ小児のANP静注に対する血行動態変化に関する知見は少ない.心房中隔欠損(ASD)においてANPが及ぼす急性血行動態変化について検討すること.【対象】合併奇形のないASDの 8 例(男 2 女 6,年齢 4 ± 3y).【方法】心臓カテーテル検査にて,ANP前,0.05,0.1,0.15γg/kg/minを10分ごとに段階的に持続静注した.各session終了 1 分前に,平均肺動脈圧(P mean),大動脈圧(A mean),肺動脈楔入圧(PC),右房圧(RA)を測定し,Fick法から肺血流量(Qp)/体血流量(Qs)比(Qp/Qs),肺血管抵抗(Rp)/体血管抵抗(Rs)比(Rp/Rs)を求めた.【結果】(1)P mean,A mean,RAは段階的傾向で有意に低下した(p < 0.05).Rp,Rsも低下傾向を認めたが統計的有意に達しなかった.(2)Rp/Rsが上昇しQp/Qsが低下する例を 3 例に,Rp/Rsが低下しQp/Qsが上昇する例を 5 例に認めた.Qp/Qs低下例はおのおの -5%,-6%,-12%低下で,Qp/Qs上昇例はおのおの10%,15%,26%,28%,41%上昇であった.(3)Qp/Qs低下例はQp/Qs上昇例に比して,ANP前のRp/Rsが低値をとる傾向が認められた(0.09 ± 0.02 vs 0.06 ± 0.02 p = 0.06).【結語】ASDにおいてANPに対し肺血管優位に作用する例と体血管優位に作用する例が混在するため,Qp/Qsの上昇や低下が認められる.ANP投与前のRp/Rsが,その作用優位性に関係している可能性が示唆された.

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