P-II-C-4
2 カ月時にうっ血性心不全で発見された腎血管性高血圧,腹部大動脈縮窄,腹部大動脈瘤の 1 症例
茨城県立こども病院小児科
岩崎陽子,塩野淳子,磯部剛志

【症例】12歳,女児【家族歴】妹(8 歳)胎児期に羊水過少があり,生後左腎欠損と診断.血管造影で左腎動脈を認めず,右腎動脈は極めて低形成だった.腎不全のため 6 歳時に腎移植を受けた.【経過】在胎38週2,570gで出生.1 カ月から哺乳量低下,体重増加不良があり,2 カ月時にうっ血性心不全のため当院に緊急入院した.血圧が上肢148/111mmHg,下肢34/25mmHgで,心エコー上心奇形はなく,BUN 30.2mg/dl,Cre 0.8mg/dlと高値,腎は両側とも低形成だった.橈骨動脈造影で第 1 腰椎以下の腹部大動脈は径2.5mmと細く,腎動脈は造影されなかった.分岐部に径12mmの大動脈瘤を認め,総腸骨動脈は先細りし,さらに遠位の動脈は造影されなかった.補体,抗核抗体,ウイルス抗体価,染色体などの検査で異常はなかった.外科的治療は困難と判断し,血管拡張薬などの内服治療で血圧をコントロールした.6 歳時に左上腕動脈からカテーテルを進めて血管造影した.腹腔動脈以下の腹部大動脈は細く,上腸管膜動脈は左に蛇行,左右腎動脈は径 1mmだった.腹部大動脈瘤のあった部分は狭窄し,骨盤内・下肢への血流は下腹壁動脈,腰動脈,上腸間膜動脈からの側副血管が発達していた.現在の血圧は上肢140/100mmHg,下肢120/75mmHg程度で,Cre 0.8mg/dlと軽度上昇している.【考察,結語】腹部大動脈縮窄は比較的まれな疾患で,fibromuscular dysplasia,大動脈炎症候群,neurofibromatosisなどが原因とされるが,本症例では原因診断に至っていない.腹部大動脈縮窄に腹部大動脈瘤が合併する症例は少なく,2 カ月という低年齢で発見された症例報告は見当たらなかった.現在まで内科的治療で血圧はある程度コントロールされており,合併症は認めていない.引き続き内服治療で経過観察する方針である.

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