P-II-C-5
拡張型心筋症を続発した先天性完全房室ブロックに対する両室ペーシングの試み
国立循環器病センター小児科1),国立循環器病センター心臓血管外科2)
竹川剛史1),林  環1),塚野真也1),黒嵜健一1),渡辺 健1),鍵崎康治2),石坂 透2),萩野 均2),八木原俊克2),越後茂之1)

【はじめに】先天性完全房室ブロック(congenital CAVB)に対するペースメーカ植え込み(PMI)後,拡張型心筋症(DCM)を続発する症例を経験することがあるが,今回,同様の症例に対し両室ペーシング(cardiac resynchronization:CRT)を施行し,良好な結果を得たので報告する.【症例】4 歳女児,congenital CAVB po PMI DCM.【現病歴】胎児エコーでCAVBとされ,37週 4 日,当院出生.日齢 9,PMI施行(VVI 120/分).1 歳時から心エコー上EFの低下,左室拡大を認め 2 歳時にDDDへモード変更.以後も心不全進行し,βブロッカー導入したが心不全進行.院内・日循の移植検討会で移植適応とされた.渡航移植先のUCLAからCRTで心機能改善の可能性の確認を要請され,2004年 5 月13日,LVリード植え込み,ジェネレータ交換を施行.【術後経過】ECG上QRS幅は160~120msec.へ短縮,2DEでの心尖部付近の壁運動の改善,RIでの大幅なPD減少などを認めた.壁運動の改善の結果,CI 1.8l/min./M2から3.4l/min./M2へと著明に上昇した.BNPは術前700pg/mlと高値であったが,術後60pg/mlと著明に低下した.また,患児のactivityは明らかに改善し,quality of lifeは向上した.【結語】DCMを続発したcongenital CAVBに対する両室ペーシングを経験した.両心室の収縮の同期性が向上した結果,CIの上昇,RIでのPDの改善,BNPの著明な低下を認め,他の諸検査でも改善を認めた.両室ペーシングは本症例に対し有効な手段であると思われた.

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