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重症心身障害者の日内心拍変動による自律神経活動の検討
京都府立医科大学大学院医学研究科発達循環病態学
小林奈歩,糸井利幸,浜岡建城

【背景】自律神経系は心血管系機能の制御に重要な役割を担っている.自律神経機能の評価法として心拍数の周期的変動(HRV)が普及している.重症心身障害者で経時的なHRVの検討はこれまでにあまりみられない.【目的】重症心身障害者の心拍変動から,自律神経機能の日内変動を検討する.【対象】重症心身障害者施設の同病棟に入院している19人(男性13名,女性 6 名).年齢中央値38歳(11~62歳).臥位または他動的に座位ができるが,食事は全介護である.【方法】対象者に24時間ホルター心電図を施行した.解析はOXFORD社のOptima Medilog Holter Management systemで行った.高周波成分(HF,周波数帯0.15~0.4Hz),低周波成分(LF,周波数帯0.04~0.15Hz)とHFの比(LF/HF比:交感神経系指標),隣り合ったRR間隔の差が50msec以上の回数や頻度の計測値(pNN 50:副交感神経指標)を 1 時間ごとに平均し,自律神経機能評価の指標とした.【結果】LF/HF比,pNN 50を 1 時間ごとに正常値と比較した結果,(A)日内変動がみられるもの11例,(B)24時間ほぼ定常状態にあるもの 8 例,(C)特異例 1 例に分けられた.特にLF/HF比のZスコア≧2 である交感神経優位群は 7 人(平均5.65),ZスコアがLF/HF比≧pNN50となる相対的な交感神経優位群は 4 人(平均 -0.44)であり,交感神経過緊張である人が多かった.【考察】全員病棟が同じで生活リズムも一定であるが,HRVの結果より自律神経機能には個人差がみられた.交感神経が副交感神経に比較して優位である症例が目立ち,交感神経過緊張は重症不整脈を誘発することが知られており,何らかの介入で自律神経のバランスをとることで病態を改善させる可能性がある.今回の検討では男女,年齢差や内服薬,発作の頻度とHRVとは明らかな関連性がみられなかった.【結論】重症心身障害者でのHRV検討から自律神経機能には個人差があり,特に交感神経過緊張の人が多いことが分かった.

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