P-II-C-10
川崎病患児における血管内皮前駆細胞の動態
京都府立医科大学大学院医学研究科発達循環病態学
岩崎直哉,浜岡建城

【背景】近年,末梢血液中に,骨髄由来の血管内皮前駆細胞(以下EPC)の存在が証明された.このEPCは,血管新生に深く関与し,成人においては外傷,虚血性病変によって骨髄より末梢血液中へ動員されると考えられている.一方,川崎病においては急性期から存在する内皮細胞障害が病態の進展に関わると予測されるが,本疾患におけるEPCの動態に関する研究はいまだなされていない.今回われわれは,川崎病患児の末梢血液中のEPC数を測定し,各病期および冠動脈合併症の有無によって比較した.【方法】川崎病急性期および遠隔期患者を対象とした.被験者の末梢血液を採取後,密度勾配下に遠心分離し単核球分画を抽出し,血管内皮細胞用の培養液にて培養する.acLDLを細胞内へ取り込み,かつlectinにて染色される細胞をEPCと判定,細胞数の計測を行う.過去にも川崎病に罹患していない同年齢層の健常児と川崎病以外の有熱性疾患罹患児を対照群とした.【結果】川崎病急性期において,EPC数の増加がみられた.また,冠動脈に形態変化を来した症例ではより増加の傾向を示した.複数回の計測が可能であった症例では,炎症反応の鎮静化に伴うEPC数の減少がみられた.遠隔期の症例については,冠動脈後遺症を有している群は有していない群に比べ,EPC数が増加していた.冠動脈後遺症を有していない群で,急性期に冠動脈に形態変化をみたものは,そうでないものに比べてEPC数が増加していた.【考察】血管内皮傷害は,EPCが末梢血液中へ動員される誘引の一つであり,EPCの増加の程度は,内皮傷害のそれを反映していると考えられる.EPC数の計測は,急性期では内皮傷害の程度を推測でき,それは,冠動脈合併症の出現を予測する手段となり,遠隔期では,内皮障害の残存の指標となる可能性がある.

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