P-II-C-11
川崎病肝機能障害例の検討
東京都立清瀬小児病院循環器科1),横浜市北東部中核施設横浜労災病院小児科2)
河野一樹1),大木寛生1),葭葉茂樹1),菅谷明則1),佐藤正昭1),三浦 大2)

【背景】川崎病の病初期には肝機能障害を合併し,ガンマグロブリン(以下GG)不応例との関連が指摘されている.【目的】川崎病肝機能障害例の検査所見,GG不応例,心後遺症との関連を検討し今後の治療方針の参考にする.【対象】2001~2004年に入院した川崎病306例を対象とした.治療はGG 2g/kgを24時間点滴静注し,全例にアスピリン(以下ASA)30mg/kg/日を投与した.【方法】ALT値(IU/l)を指標とし肝機能障害を評価した.GG投与前のALT値が40以上の症例を肝機能障害群(+群),40未満を正常群(-群)とし,血液検査所見(WBC,Hb,Plt,Alb,CRP),追加治療を要したGG不応例,心後遺症について後方視的に検討した.【成績】306例のGG投与前のALT値の検査病日ごとの平均値は 4 病日をピークに有意に低下した(3 病日:105.7,4 病日:115.7,5 病日:89.2,6 病日:69.5,7 病日:53.8,8 病日:26.8;p = 0.013).+群は127例,-群は179例であった.Hb(g/dl)(+群:11.5;-群:11.2,p = 0.005),Plt(万/γl)(+群:33.2;-群:35.6,p = 0.01),GG不応例(+群:29例;-群:18例,p = 0.002)は有意差を認めた.WBC(/γl)(+群:13,627;-群:13,549,p = 0.72),Alb(g/dl)(+群:3.6;-群:3.6,p = 0.87),CRP(mg/dl)(+群:8.52;-群:7.91,p = 0.11),心後遺症(+群:7例; -群:4例,p = 0.13)は有意差を認めなかった.全症例のALT値の平均 + 標準偏差(220)以上の例を高度肝機能障害群(31例)とし,GG投与前と投与終了 2 日後のALT値を比較すると全例で低下し(平均値:413→104),11.4病日に正常化した.【考察】川崎病の肝機能障害は,(1)病初期に一過性に認められるが,病日とともに改善する.(2)同日のWBC,CRPとの関連は認めなかった.(3)GG不応例との関連は示唆されるが,肝機能障害は病日ごとに変化するため不応例の予測には検査病日を考慮する必要がある.

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